ひかる (ページ42)

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僕もみんなも◇12.12.01 ページ42

＊

「俺、むすめん。辞めようと思ってて」

パソコンの中のあっすーの声。
それ以外には何も聞こえなくて、
それが少し嫌だった。

「…どうして…？」
少しの間、誰も何も言わなかったけど、
最初にぷんちゃんが小さい声を出した。
「…なんで？あっすー、みんなで踊るのも、喋るのも、楽しいって言うてたやんか…むすめん。が好きだって、何度も…」

最後にSkypeに参加したげるたんを待ちながら、
雑談から始まって、
結局本題に入れたのは、夜の22時。

私の隣には、碧海が座っている。
その横にはお母さん。

みんなが、あっすーの言葉を待っていた。

「…むすめん。は楽しいし、好きだよ。メンバーのみんなも…それは変わんないけど、……俺がついて行くには、ちょっと難しくなってきて」

隣の碧海は、じっとパソコン画面を見ている。

「…」
「…戸惑ってるんだよ。むすめんは、どこまで行くの…？」

戸惑ってる。

その言葉の意味がよくわかる。
碧海だって戸惑ってた。他のみんなもそう。
ワンマンもＣＤも、ファンからお金をとることは…
母さんは、商業的、って言ってたけど、
それは、確かに、踊ってみたの一般人としては、
一線を越えてるかもしれない。

「…心配しなくても大丈夫だよ、戸惑うファンの人もいるかもしれないけど、喜んでくれる人もいるから、絶対…」
そう言ったのは白服さんだった。
「あっすーが抜けたら悲しいよ、僕もみんなも……もちろん、ファンのみんなも」

恋愛ハンター、
白服さんの向かって左隣で、
キラキラした笑顔でキレキレに踊るあっすー。
まだ強く、印象に残ってる。

もしその人が、いなくなったら、って考えたら、
心に大きな穴が開くみたいだ。
…辛いよ。

「抜けんといてや、あっすー…」
のっくんがぽつり、と言う。
「寂しいって…先生だけじゃなくて、また一人抜けんのはさ…」

A、って、
碧海がマイクに乗らなそうなくらい小さな声で呟いて、私を見た。

……言えないよ、
辞めないで、なんて…。
私に引き止める権利はない、
今すぐ、通話を切りたい。これ以上、
この話、聴きたくないよ…。

「変わっていくむすめん。を、嫌いになることなんてないよ」

「……」

「それがむすめんのみんなの決断なら、止めたくないし…でも、仕事の具合もあってさ、俺には厳しい」

うん、って、碧海が頷いた。

誰も何も言えなくて、
重い空気のままなことを、申し訳なく思ったのか、

「また…イベント近々あるしさ、そん時にでもまた、話そっか…ごめんな」
あっすーはそう言って、笑った。