ひかる (ページ18)

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蚊帳の外感◆12.06.03 ページ18

ADSを撮り終えたら、風のような速さで人１のいるスタジオに向かった。
ちょーっとだけ久しぶりに会ったえーすけや、なおきさん、なおとさんとの別れを惜しみつつ、
駆け出す俺の後ろ姿を、着いていけないわ、って母さんは見送った。

時間は夕暮れ。
さすがに人１たちも撮影終えただろうけど、
さっき母さんが父さんにLINE送ったら、まだスタジオにいるよ、だって。
高クオリティを追求しそうな二人だから、長引くのかな。
会話は弾まなそうだけど。

駆け込んだステージでは、半分俺の予想通り、
人１と白服さんが、カメラを覗き込んで何やら話し込んでいた。
床に座り込んだ二人の周りには、パソコン、マイク、たくさんのケーブル。

床にもたれかかって座り、遠くから二人を見ていた父さんは、うとうとしている。

「…A？」
人１と白服さんは、同時にこっちを向く。
「あおい！お疲れ様」
「こんにちはー」
「白服さん、こんにちは」

白服さんは、首にヘッドホンをかけていた。
「…あ、これからレコーディング、みたいな？ですか？」
「ううん、今終わったとこ。どうせなら今撮っておこう！って」
白服さんははにかんだ。
いつも通り、ちょっと丈の短い白いシャツ。
「…どこで？」
「トイレマン」
「うそぉ」
「レコーディング室なんて借りれないんだもん」

人１は平然と、カチカチ、とマウスでパソコンを操作している。
「それでー……仮面にいろいろMIXとかハモりとか、電話でキョウジュさせてもらって。あとはAちゃんのレコーディングを済ませて、編集」
白服さんが俺を見上げて説明してくれる。
…なんか、めちゃくちゃ話が進んでる！

「白服さん、これ解像度上がらないですか？」
「今はちょっと難しいかも。エンコード長くなるし…ビットレートは大きいはずだから」
「再生重くなったり…」
「ちょっとだけ。ギリギリを攻めてる」

専門用語が飛び交う中、とっても蚊帳の外感。
動画の編集の仕方を教えてもらってるのかな？
「…結構かかりそう…？」
しゃがんで、人１の操作するパソコンをのぞき込む。
うん、って人１は頷いた。

「ごめんね、わざわざ来てくれたのに…じゃあ急いでレコーディングするね」
白服さんが手渡したヘッドホンを、装着する人１。
でもヘッドホンが大きすぎて、ずり落ちた。

「あ、長さ調節できるよ」
って、白服さんが人１の頭に手を伸ばした時、

「あっ！！」

思わず、甲高い声が出た。
二人が静止して、えっ？ってこっちを見た時に、
恥ずかしくなる。

「…っ俺がやったげる！A」