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「いや確かに、自分でコツの掴めそうなやつ、無理のない範囲で、やりたい魔法選んでマスターしていいよ、とは言ったけどさ」
年明け。
久しぶりに会った白服さんにお願いして、訓練の途中経過を見せた昼下がり。
その人に迷惑とかどうとか考えない!校長先生に選ばれた9人には責任があるんだから、
これでもかってくらい使う!最大限に使う!
って、とみたんからの教えだ。
白服さんは腕を組んで笑った。
「随分攻撃的でリスクの高い魔法ばっか覚えるんだね?回復系はどうしたの」
「ほら、私みたいな下級兵士は…捨て身の作戦でいったほうが、効率がいいです」
そう言うと、白服さんはまた笑った。
「捨て身って!真面目な顔でそんなこと言うの!のっくんの病気は治したいのに?」
「治したいけど、それは別です」
「死んだら元も子もないけど」
「白服さんが治してくれるじゃないですか?」
白服さんは目を見開いて、二秒間くらい固まった。
「…Aちゃん確信犯?」
「まさか」
堪えきらなくなって少し笑うと、白服さんも笑った。
初対面の時より、笑顔が増えた気がする。
「じゃあ、そんな素直なAちゃんには、助けを呼ぶ魔法を教えてあげないと」
白服さんはローブの懐から、杖を出した。
「ペリキュラム」
白服さんがそう唱えて、
杖の先をクイって真上に向けた時、
ぴゅーっ、
ぱんっ。
真上の空に、小さな花火が打ち上がった。
「わあっ」
「これでAちゃんがどこにいても、回復班がすぐに見つけられる」
「凄い発明!頑張って覚えます!」
私は土の地面に、木の枝で呪文を忘れないようにメモした。
「…その文字、これからAちゃんがその上を駆け回って、気付いたら消えてるに100ポンド」
白服さんを見上げる。
「100ポンドも!?明らかに消えるってことですか!」
確かに言われればそうだ。
歩くトラブルメーカーの称号を、あおいや二番くんから既に頂いている。
「そうか、今マスターすればいいんだ」
私はダメ元ながら、杖を構えて、
「ペリキュラム」
その時、
自分の持った杖の先で、
火花が弾けた。
「えっ!?」
思わず杖を放り投げる。
頭上ではなく、まさかのダイレクト!
そのまま後退りをして、バランスを崩し尻餅をついた。
白服さんもびっくりして、数メートル先に落ちた、小さく煙の昇る杖を見た。
「あははっ」
そしてその直後に、思わず二人、顔を見合わせて笑った。
白服さんはツボに入ると笑いが止まらないタイプらしい。
「まさか!そんな失敗、あんの!?」
そんなに潔く笑われると、こっちには恥ずかしさは微塵も残らない。
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ひな(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!コメント励みになります(;;)がんばります!! (2018年3月3日 18時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ひなさんの小説の世界観が大好きでいつも楽しませてもらってます!!更新大変だとは思いますが、がんばってください! (2018年3月3日 14時) (レス) id: a81d6c10a8 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 有栖夢子さん» ありがとうございます!頑張りますね(;;) (2018年2月28日 16時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
有栖夢子(プロフ) - いつも楽しんで読ませてもらってます!楽しみにしているので、これからも頑張ってください! (2018年2月27日 22時) (レス) id: 75b30202ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2018年2月15日 21時