35わあっと ページ35
*
「Aちゃん」
優しい声で目が覚めた。
はっとして身体を起こす。
手元を見たら、机一面に勉強道具の山。
そこに手を置いて、隣のぷんちゃんが私の顔を覗き込んだ。
「寝落ち?無音の実験室借りて勉強とか、なかなか斬新なこと考えるよなAちゃんも」
「化学が相変わらず分からなくて…」
「こんな所で寝てたら風邪ひくで」
「ごめんなさい、頑張ります」
私は頭をぶんぶん振った。
「あー、いや。叱りたかったわけやなくて…」
ぷんちゃんの言いたいことはだいたい分かっている。
「今日は折角のイブの夜やろ?今日ぐらい、勉強しなくてもいいんちゃう?」
にこ、って口角を上げる、
私はぷんちゃんを見上げて笑った。
「いいんです。のっくんはまた体壊しちゃって…どんちゃん騒ぎするわけにもいかないし。あおいは用事入っちゃって、やる事ないから」
ぷんちゃんもきっと、今日の夜も忙しい。
目を擦った。もう外は十分暗い。
ぷんちゃんは微笑んで、私の手を握った。
「行こう、Aちゃん」
「え?」
「イルミネーション、見せてくれるって約束やろ?」
ああ。
そういえば、そうだ。
私は立ち上がった。
右手があったかい。
学校の屋上は4階の上にある。
基本立ち入り禁止なんだけど、魔法の使えない私が昔開発した侵入ルートを使う。
扉よ開け の呪文を唱えてもいいんだけど、バレそうだからいいや。
誰もいない真っ暗な校舎を、
ぷんちゃんはお化け屋敷だ何だとはしゃぎながら、ケラケラ笑って歩いて、
屋上に着くや否や、わあっと歓声を上げて駆け出した。
「めっちゃキレー」
屋上の手すりに掴まって、白い息を吐く。
「ホントですよね」
イルミネーションは、星の輝きに負けず、遠くでキラキラしてる。
「幸せ、見えますか?」
「見える、見える!」
あはは、ってぷんちゃんは笑った。
「今が幸せやもん」
優しい人だ。
ぷんちゃんのその言葉に、またたくさんの人が幸せになる。
「ぷんちゃん、……今年はホントにありがとうございました。メリークリスマス、アンドハッピーニューイヤー」
ちょっと早いけど。
ぷんちゃんは私を見ると、私から2、3歩距離をとって、片膝を地面に付けた。
「お手をどうぞ、お嬢さん」
少しせわしない、王子様。
私はその手を取って、
ぷんちゃんがセルフで口ずさむメロディーに合わせて、踊った。
ぷんちゃんのターンの回数が異常だったり、
タップを間違えたり、ダンスの途中にモノマネを始めたり。
タップダンスも即興でやってくれた。
たくさん笑った。二人だけなのに、死ぬほど笑った。
本当に幸せを貰ったみたいだ。
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ひな(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!コメント励みになります(;;)がんばります!! (2018年3月3日 18時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ひなさんの小説の世界観が大好きでいつも楽しませてもらってます!!更新大変だとは思いますが、がんばってください! (2018年3月3日 14時) (レス) id: a81d6c10a8 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 有栖夢子さん» ありがとうございます!頑張りますね(;;) (2018年2月28日 16時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
有栖夢子(プロフ) - いつも楽しんで読ませてもらってます!楽しみにしているので、これからも頑張ってください! (2018年2月27日 22時) (レス) id: 75b30202ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2018年2月15日 21時