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34じゃない ページ34

「ううん…最近カラス見かけるの多いよね。怪我ないみたいで良かった」

私は自分の杖とその子の杖を地面から拾い上げて、その子に駆け寄った。
そしてその杖を差し出す。

でもその時、
私は自分の右手に握ったものを見て、

「ひっ」
思わずその杖を放り投げ、手を引っ込めた。
杖はカランと音を立てて、もう一度地面に落ちた。

マツの木でできた杖に、
黒い独特の紋様。
ウラン一族の持つ杖だ。

後退りをする。
その子の顔をもう一度見た。

ブラックローブ。
黒い髪の間から、緑がかった綺麗な瞳が見える。
ネクタイの色は私と同じ、一年生。

助けて、と叫びたかった。
恐ろしくて声が出なかった。

これまで、私の敵じゃないウランなんていたことが無かった。
ウラン一族は魔力もコントロールも、他の一族とは一枚上手で、
私が少し訓練したところで、敵う相手じゃなかった。


その時。


「A?」

聞きなれた声がして、どっと安心する。
私は声のした方に駆け寄った。

あおいはランプを持って、驚いて私を見た。
「どうしたの?一人で歩かせるのは危険だからって、のっくんが連絡よこしてきたんだけど…」
私はあおいの影に隠れる。

「…あ?げるたんじゃん!」

するとあおいは、
ウランのその子を見て、顔を輝かせた。

「えっ」
「ひっさしぶり!全然忙しくて話せてなかったけど、元気かー?」
うそ。友達!?

あおいの友達に悪いやつはいない。
私が目を見開いてあおいを見ると、あおいは私の手を無理やり引いて、その子の前まで走った。

「…ウランの子だからって警戒した?げるたんは良い奴だよ」
「で、でも…」
ウランに関しては、少々トラウマがある。
こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、私に対してとあおいに対しての態度、全然違う子はたくさんいる。

「ああ。いいんだ!アオイ」
その人はぶんぶん首を横に振った。
「兄さんたちも同郷の奴らも、少し荒れてるからさ。仕方ねーよ。いや、俺感謝する側だし」
「え?」
その人は私の手から滑り落ちていた、杖を拾い上げる。
「カラスに襲われて困ってたのを、勇敢に助けてくれたんだ」

そして、顔をしわくちゃにして笑った。
「ありがとう、アオイの友達さん」
いいえ、じゃない、どういたしまして、違う。
謝るべき?それも違う。
私はあおいの後ろで結局黙ってしまった。

その人はくるんと方向転換をして、去っていってしまった。
久しぶりのあおいとの再会なのに、私がビビってるのを見て、気を遣って帰ってしまったんだ。
…少し、悪いことをしたかもしれない。

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ひな(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!コメント励みになります(;;)がんばります!! (2018年3月3日 18時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ひなさんの小説の世界観が大好きでいつも楽しませてもらってます!!更新大変だとは思いますが、がんばってください! (2018年3月3日 14時) (レス) id: a81d6c10a8 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 有栖夢子さん» ありがとうございます!頑張りますね(;;) (2018年2月28日 16時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
有栖夢子(プロフ) - いつも楽しんで読ませてもらってます!楽しみにしているので、これからも頑張ってください! (2018年2月27日 22時) (レス) id: 75b30202ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作成日時:2018年2月15日 21時

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