18こんなに ページ18
あおいはいつもの調子で、
まぁ別になんでもいいけどね、じゃ、がんば!
って、箒にまたがって、ぴゅーっと飛んでいってしまった。
智哉さんも、じゃあまた明日、おつかれ、って感じでそれに続いた。
一人残された私は、もう一度杖を握り直し、
深呼吸して、
ルーモスを唱えてみた。
変わらない、木の棒の先っぽ。
ふと、あの時の感覚を思い出した。
必死の、絶体絶命の場面で、絶対に成功してほしいと思った、あの時。
…成功した時の感覚。
じわ、って身体が身震いする。
感覚を掴めそうな予感、
私は無意識に、その杖の先を、さっき三往復した木に向けていた。
爆破、は、体に負荷がかかると言われた。
粉々の呪文は、……その強化版はどうだろう。
少し体に負担がかかったとしても、死ぬ程度じゃない、弾き飛ばされても、我慢できるくらいだ。
本で何度も読んだ。
「___レダクト・マ___」
「デパルソ!!」
唱えようとしたその瞬間、
杖が何か、見えない力に、バチン、と弾かれ手から離れた。
退け の呪文。私は声のした方を見る。
「…裕大さん」
運動場の入口の方から来た、代表生。
右手に杖を持って、私に向けていたのを、下ろした。
「……調子はどう?」
そしてそう、にこ、って微笑み首を傾けた。
「ごめん、上級生の話し合いに少し混ざってたから、ちょっと遅れちゃった…びしょびしょだね、髪。今日も頑張ってたんだ」
「…でも裕大さん、私…」
「はは、急にやれって言われても、簡単にはできないのが魔法だよね」
裕大さんは私の方に駆け寄ってきて、
弾き飛ばした私の杖を拾い上げた。
「裕大さん」
裕大さんは私の右手に触れ、その杖を握らせた。
「教えて、くれませんか。ルーモス」
顔を上げて私の目を見て、口角を上げる裕大さん。
「のっくんに、Aちゃんは花咲の呪文が得意なんだ、って聞いた。やって見せて」
「…オーキデウス」
私は、裕大さんの右手を開かせて、そこに向けて唱えた。
裕大さんの手から溢れる、カモミール。
「…のっくんに、教えて貰ったんだってね。ずっと昔に」
裕大さんは、手から溢れるように落ちていく花びらを目で追った。
「そうです」
「のっくんは、こんなに素敵な魔法を、Aちゃんに覚えてもらいたいと思って、教えたんだよ」
「…え?」
裕大さんは私の目を見ると、微笑んだ。
「魔法を唱えるうえで一番大切なのは、気持ちなんだと思うよ。イメージとか、願いとか。本来オーキデウスを唱える時の意思って、人を虐めるためのインセンディオを唱える意思より、強いと思うんだ」
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ひな(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!コメント励みになります(;;)がんばります!! (2018年3月3日 18時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ひなさんの小説の世界観が大好きでいつも楽しませてもらってます!!更新大変だとは思いますが、がんばってください! (2018年3月3日 14時) (レス) id: a81d6c10a8 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 有栖夢子さん» ありがとうございます!頑張りますね(;;) (2018年2月28日 16時) (レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
有栖夢子(プロフ) - いつも楽しんで読ませてもらってます!楽しみにしているので、これからも頑張ってください! (2018年2月27日 22時) (レス) id: 75b30202ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2018年2月15日 21時