【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 肆色*

61色目 ｢小さな天狗が、まさかこうも早く私を認めてくれるとは｣。 ページ28

わなわなと震える私を他所に、今剣は喋り続ける。

｢うそでもありませんし、だましているわけでもありません。ぼくはぼくのめでみて、ぼくのことばであるじさまとおはなしして、このひとをぼくのあるじさまにしよう、とおもっただけです｣
｢ひぇ…………｣
｢さいしょはこわかったし、ひどいひとだな、とおもっていましたよ。でもじっさいにはなしてみたら、けっこうおもしろかったしいいひとだなっておもったんです。ほんとうですよ｣

作業の手が止まったままの私のことも気にせず、まだまだ目の前の少年はペラペラと話していた。

｢ぼくのむりじいのおにあそびにも、なんだかんだでつきあってくれたじゃないですか。ほんとうにいやなら、ぼくのことけりとばしたりも、できたはずです｣
｢……私は、そんな野蛮な人間に見えていたのか｣
｢それはとうぜんでしょう。おおひろまで、あんなこといってたんですから。なんでしたっけ、｢わたしのめいれいをきけ、わたしのるーるにもしたがえ｣、みたいなことです｣
｢ゔっ……｣

またまた初日のことを持ち出された。もうダメだ……なんで私はいつもこう……大事な時に限って後先考えずに喋って、こういう時になってから後悔するかなァ……。

｢それについては……本当に悪かったと思ってる。私の酷く悪い癖みたいなものなんだ。直さなきゃ直さなきゃ、とは思ってるんだがどうにもうまくいかなくて……｣
｢わぁ、せいかくわるいですね｣
｢うぐっっ……｣

もうダメだ。お手上げだ。ため息をついて、私は手元の刀の手入れを再開した。
だが……とまた思うところがあった。

｢私がそんなことを言ったにも関わらず、岩融は笑い飛ばしただけだったのか？｣
｢そうですよ｣
｢そっ……そうなのか……｣

これは希望が見えてきた。あまり敵対されている気配が見えないのだから、すぐに私のことを主として認めてくれそうだ。
今剣の手入れが終わったら、岩融との接触も図ってみよう。大丈夫、私ならやれる。

短刀を見、少し動かしたその先に反射した今剣の顔を見て、あ、と思った。言わなければいけないことがあるじゃないか。

｢今剣｣
｢はい、なんでしょう｣
｢私をあるじさまと呼んでくれたということはつまり、私を主と認めてくれたということ。それは……私の刀になってくれると、そういうことで、合ってる？｣

こてんと首を傾げたあと、すぐにけらけらと笑い出して彼は言う。

｢あははっ！とうぜん、そうにきまっているじゃないですか！｣

62色目 ｢他者にとっての普通が自分の普通とは限らないしその逆も然り｣。→←60色目 ｢過去の罪は半永久に自分にまとわりついてくる｣。

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