【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 肆色*

57色目 ｢もう本当にいい加減本丸全体の間取りを覚えないといけない｣。 ページ24

諦めてしゃがんだまま頭を抱え、ちらりと薬研を見た。

｢だがその……ほ、保証はできないぞ。必ず逃げないなんて保証は絶対出来ないからな｣
｢その時は仕方ないが、神力を使わせてもらうさ｣
｢ゔあﾞあﾞ逃げ道が消え去った｣

私はこの美形少年からもう二度と逃げられないのか!?!? この近侍からこの男士から、もう逃げられない……!?!?!?

｢ほ、本丸を追い出されるよりよっぽど重い命令だ……｣
｢……大将は……｣
｢……うん？｣

ちらっと一瞬見えた"色"があったが、それが何を意味するかを判別するより前に消えてしまった。なにを言いたかったのだろうか。

｢……いや、なんでもない。とりあえずはそういうこった。頼んだぞ、大将｣
｢ひぃ……善処いたします…………｣

かっかと火照る顔を隠すように手で頬をおさえ、今度こそ立ち上がった。そして、きょとんとしている他の奴らをおいて今剣の服を引っ張る。

｢ほ、ほら、手入れ部屋行くぞ。早く怪我治さないとだろ｣
｢あっ……わかりました。ではみなさん、またあそびましょうね！｣

きゃあきゃあと手を振る今剣を半ば引きずるようにして、足早に手入れ部屋へ向かおう……とした。
さて、そういえばここはどこだ？

｢……今剣｣
｢はい、さにわさん。どうしましたか？｣
｢手入れ部屋までどう行けばいい？｣
｢えっ？わからないんですか？｣
｢ああ。私はまだ本丸の間取りを覚えてない｣

えー、と困ったように眉を下げる今剣。

｢さっきいってた、"いろ"をつかえばわかるんじゃないんですか？｣
｢それの分はもう返しちまったから。今の私は道が分からんただの迷子だ｣
｢……？ よくわかりませんが、そういうことならぼくがあんないしてあげましょう｣

今剣は手際よく私を道に沿い連れていってくれる。しばらく歩いているうちに、なんとなく覚えてる廊下に出てきた。

｢おっ……もしかして、ここを左に曲がれば、手入れ部屋か？｣
｢おおー、まいごのさにわさん、すごいです！せいかいですよ！｣
｢迷子の審神者さんってなァ……ま、いいや。間違ってないし｣

廊下を曲がり、幾度か見た部屋が目につく。そしてあの、私がぶち壊した戸も。

｢……？これ、なんでしょう。どうしてかみがはってあるんでしょうね？まえまではこんなもの、ありませんでしたよ｣
｢……ま、まァまァ。ちょっと事情があったんだ、あはは……。……さ、ほら部屋に入って｣

資材は……まだある、よし。準備をして私は、今剣の手入れに取り掛かり始めた。

58色目 ｢時代感覚がズレていると話を進めるにも一苦労する｣。→←56色目 ｢迫ってくるイケメンから逃げるなと言われる方が無理な話｣。

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