【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。*弍色*

86色目 ｢平和ってのは特別面白くもない部分に隠れているものらしい｣。 ページ44

｢大抵そういうときって処分って言葉を使うと思うんだが、わざわざ接収するってことは、何か証拠として残したりしないといけないのか？｣
｢そこまでは……すみません、私にも……｣

そこでこんのすけは黙ってしまった。これ以上は何も言わない方がよさそうだ。

｢まァ事情は分からんけど分かった。あれは明日にでも朱月さんに手伝ってもらって政府に引き渡す。悪いけど2人も手伝ってほしい｣
｢ああ、分かった｣
｢もちろんだ｣

あと獅子王にも手伝ってもらいたいんだけど……ていうか獅子王は？

｢獅子王どこだ｣
｢獅子王は風呂の湯を沸かしに行って、それきりだぜ｣
｢まじで？ んん……ならまァいいか、あとで探しに行こう。やることもひとつ手間が省けたし。……こんのすけ、話はそれで終わりで大丈夫？｣
｢はい、報告することは以上です｣

伝えること伝えて気が抜けたのか、こんのすけはぐいーっと体を伸ばした。こう見るとやっぱり管狐と言えど動物なんだなって思う。リードつけて散歩させたくなるな……。

そうだ、晩メシどうしよう。厨は掃除したから使えるし、多分食料も届いてるはずだから、ぶっちゃけ作れないわけじゃない。どうしよう作るか？ 作っちゃうか？

数秒ほど悩み、出した答えを口にした。

｢……晩メシ作るの手伝ってくれる人手ェ上げて｣
｢……？｣

いきなりどうしたんだという顔をしながら、おもむろに手を上げる2人(と1匹)。個人的な偏見で鶴丸がちょっと不安なんだけど、まァこいつらなら一緒にまともなもの作ってくれるだろう。

｢よし、じゃ今からメシ作るから食料庫行くぞ｣
｢えっ今から!? さすがに早いだろう！｣
｢馬鹿、アホ、作るのにどれくらい時間かかるのか知らないんだろ！ 作るだけじゃなくて片付けとかもしないといけないんだから今からするくらいが丁度いいんだよ！｣

びっくり鶴にはそんなこと分かんないよなー！ なんて言って、先に部屋を出た。びっくり鶴なんて言われたのにびっくりしたのか鶴丸は目を見開いて黙ったまま、でもしっかりついてくる。

｢びっくり鶴がびっくりしてどうすんだよ｣
｢まさかそんな呼ばれ方するだなんて思わないじゃないか｣
｢びっくり鶴ってあだ名はお気に召さないか｣
｢気に入る気に入らないというより不本意だ｣
｢つまり気に入らないと、ほほーうそれは残念｣

他愛ない会話ができるのはいい。本当にそう思う。
特別盛り上がることも下がることもなくただの何気ない会話をして歩き、食料庫の前に来た。

87色目 ｢刃物Aを使えたとして、刃物Bも使えるとは限らない｣。→←85色目 ｢薄情に見えても案外それが最適解であることは多い｣。

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