【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。*弍色*

58色目 ｢自分がボダだからってボダの他人の扱いは分からない｣。 ページ13

｢俺が、もっとちゃんとしてれば、主の言うことも聞いてれば、主の役にたってれば良かったんだよね、ねぇ、俺が、俺が……｣
｢加州｣

ぶつぶつと独り言のように、それでいて誰かに助けを求めるように縋るように、自分を責め続ける加州。これどうすりゃいいんだよ。

どう対処すればいいのか、私には分からない。ただ黙って加州を見ているだけだった。

｢ねぇ、俺が悪いんだよね、俺が……主を……｣
｢……えっ…と……｣

突然ばっと加州は顔を上げた。両目には涙が溜まっていて今にもこぼれ落ちそうだ。今から加州が何を言うのか、分からないけど分かってしまいそうだ、やめてお願い。

｢あんた……新しい主なんでしょ？ 俺たちの、新しい主でしょ？｣
｢う、うん……そうだけど｣
｢俺、手入れの時色々言ったけどさ、けど主になってくれるんでしょ？｣
｢そう……だな、約束したし｣
｢じゃぁお願い、俺の主になって、俺のこと沢山可愛がって、愛して、捨てないで、お願いなんでもするから｣
｢……｣

返答に困る。どう答えればいいのか、どう言えばいいのか。こいつは何を求めているのか、目の前のこの刀が何を望んでいるのか。……外したら失敗する、当ててもきっと面倒なことになる。メンヘラとはそういう生き物だから。

｢主になれと言うなら、もとより私はそのつもりだよ。捨てることもしない。だけど、ごめん、愛せない｣
｢……なんで｣
｢なんでって、言われてもなんででもだよ。……刀としてなら愛せるし使ってやるけど、お前の求める感情は、私はお前に与えることはできない｣

加州は目を見開き、ただ黙った。うん、そうなるのは分かってた。分かったけど。
ひとまず落ち着かせようと思い口を開きかけたその時だった。背後から足音がして誰かが近づいてきた。

｢いた、清光……！｣
｢やす、さだ｣
｢やすさだ……？ 大和守安定か｣

振り返ると青い羽織を着た、これまた随分と怪我をしている男子がいた。なるほど、こいつが安定っていうのか。……じゃないよ、すごく殺気向けてきてるんだけど？

｢お前清光になにしてんだよ、今すぐ離れろ！｣
｢うおっ……と、馬鹿野郎危ないだろいきなり蹴るなよ！ っていうか見るからに怪我酷いんだから動かない方がいいんじゃねェの!?｣

蹴ってきたから慌てて庭に降りた。これが刀剣男士か、傷を負ってもこのスピードとかほんと怖いな。

驚いたせいで私の心臓がバクバクしているその横で、加州はふらふらと立って安定にしがみついていた。

59色目 ｢人は自分と似た人をあまりよく思わないらしい｣。→←57色目 ｢この世で1番とまではいかないが見たくない色だな｣。

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