次期社長のお目付役 (ページ1)

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1話ページ1

辞令

貴殿のこれまでの功績を称え、2024年3月14日付をもって、秘書課専務秘書の任を解き、同日付をもって秘書課京本部長専用秘書に任命します。

4月から社長秘書になれる。

そう聞いて浮かれていた私を待ち受けていたのは、この辞令だった。

『京本部長専用秘書？』

社長の名前は京本政樹。

だから、京本さんの秘書になるという意味では間違っていない。

でも、京本部長となると、役職があまりに違う。

高地「あ、深川さん。おはよう。ごめんね急に。」

高地部長。
彼が秘書課のトップだ。

『これ、何かの間違いじゃないですか？京本社長専用秘書じゃないですか？』

専用っていう言い方もなんか変だ。

普通社長秘書は社長の専用だから、こんな書き方はしないはず。

高地「社長に息子がいることは知ってるよね？」

確かに聞いたことがある。

『はい。存じ上げております。』

高地「社長からの直々のお願いで、しばらく京本部長の専用秘書をよろしく。その後、社長秘書になる感じだから。」

間違いじゃなかった。

社長の息子、京本大我。

眩しすぎて直視できないぐらいの美男子だが、クールで無口で、何を考えているかわからない人らしいという話を聞いたことがある。

優秀だけど、冷たすぎて社員がついてこない。

おそらくこのままでは、社長の素質はないだろう。
そう社内では評価されている。

高地「社長の要望はね。息子を社長らしく仕上げること。だから、深川さんがやるべきことは、京本部長がこれ以上社員から冷たい人だと思われないようにフォローすることと、人間らしさを引き出すこと。」

つまり、お目付け役？

高地「お願いしますね。」

『かしこまりました。』

私は、しがない会社員。

社長の希望に沿うように働かなければ。

とりあえず、私は京本部長の生態を観察して、どういう人物なのかを知らないといけない。