9.彼らの音楽 ページ9
「あれ、アンプコードもう1本どこ？」
「そっちにあるでー。」
「彬、ここの準備手伝って。」
「はーい。あ、A。そこ座っといてええで。音出しと調整終わったら1回曲通すからちょっと待っとってな！」
「あ、うん。ありがとう。」
スタジオに入ると、即座に4人は演奏の準備を始める。
私はバンドが好きとはいっても演奏の経験がある訳ではないので、大人しくその様子を眺めておくことにした。
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前から『演奏する側』に興味はあった。
しかし残念なことに前まで在籍していた高校には軽音部は無く、周りにバンドをやっている人もいなかったため、私に音楽を始めるチャンスは来なかったのだ。
…彼らを見ていると、本気で音楽をやっているのが伝わってくる。
プロ以外では初めて見る準備の光景に、思わず興奮が抑えられなくなった。
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準備が終わったのか、山中くんはこちらに向けてマイクに声を通す。
「Aさん、実は今からやるやつ、俺が作詞作曲しとんの。新曲でまだ誰にも披露してへんからあとでしっかり感想聞かせてな。」
ただでさえ完璧な彼が曲も作れてしまうことに驚きつつも、私は新曲を聴ける嬉しさから一生懸命首を縦に振った。
さぁ、彼らの音楽はどんな形をしているのだろうか。
「…じゃあ、聴いて下さい。THE ORAL CIGARETTESで『Mr.ファントム』。」
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イントロが始まった瞬間、身体中に衝撃が走った。
楽器隊の疾走感ある音。彼らならではの世界観が確立していて、一瞬で引き込まれる。
山中くんの歌声はなかなか癖のあるものだけど、耳にスっと入ってくるから嫌いじゃない。むしろ好きだ。
村上くんの真っ直ぐなハモリといい感じに混ざりあって、更にかっこよさが増す。
こんなに素晴らしいバンドをしている人達が、まだ高校生…？信じられない。
山中くんの透き通るような裏声に心臓を掴まれ、あっという間に魅入ってしまった。
「かっこいい…」
曲が終わって1人で拍手をしていると、みんな一斉に「2番のサビ前にミスがあった」「テンポのズレがあった」などの意見を言い出した。
きっとまだまだ伸びしろがあるんだろうな…本当に凄い…
早く、感想を伝えなくちゃ。
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そういえば、演奏中に山中くんと何度か目が合った。
…一瞬だけど、さっきまでみんなで話していた時とは違う、この前の時のような冷たい目をしていたような気がする。
私の思い違いだといいんだけど…
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鏡花(プロフ) - みるふぃーゆさん» ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞわざわざコメントありがとうございます……更新頑張ります……！！ (2021年3月1日 18時) (
レス) id: 06f9fd4453 (このIDを非表示/違反報告)
みるふぃーゆ(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです！！続きが更新されるのが楽しみです^_^ (2021年2月28日 21時) (レス) id: ed7d8d6f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鏡花 | 作成日時：2020年10月11日 11時
