高校生活というのは追いかけっこでは断じて無いはず【天童覚】

ページ１２「要(い)らぬ事」 ページ14

.





「瀬見くんうどん冷めるよ、既(すで)に冷め始めてると思うよ。
覚は要(い)らぬことを話すな」


「いらぬ事じゃないよ！」


「どうでもいい事だわ。
瀬見くん、コレのことは気にしないで食べていいよ」




瀬見くんに声を掛(か)けてから覚に文句(もんく)を言うと覚は反論(はんろん)してくる。


そんなヤツは無視(むし)して、昼の食べられない可哀想(かわいそう)な瀬見くんに気にするな、と声を掛けておく。


なんであたしが静かに昼食べられないで、人に気を効(き)かせなきゃいけないんだよ。ほんと巫山戯(ふざけ)んな。





「じゃ、いただきます」
「ちょっと２人とも無視しないでよね！！」
「Shut Up(シャラップ)！」



手を合わせる瀬見くん。

瀬見くんの挨拶(あいさつ)と被(かぶ)る様に言う煩(うるさ)い覚に、ついついムカついて英語が零(こぼ)れてしまう。


別に英語圏(けん)に行ったことなんてないけど本当にムカつくと出てしまうだけ。



ジロリと本気で覚を睨(にら)む。
覚は元々でかい目を開いて眉(まゆ)を上げて、それから目をあたしから逸(そ)らして、ムッと口を噤(つぐ)んだ。


あたしはナムルを食べ終えたので、好物のメロンパンの袋(ふくろ)を両手で破(やぶ)って齧(かじ)り付き始める。






「ところで天童と箭野(やの)はどういう関係なんだ？ 中学同じとか？」



あたし達のことを良く知らない瀬見くんの、当たり前だけど唐突(とうとつ)な言葉に、あたしは瀬見くんに目を動して口を開く。




「従姉弟(いとこ)だよ従姉弟」

「いとこ！？」

「そう、母方のだから苗字は違うけど」


「昔から仲良いんだヨ」
「断固否定(だんこひてい)」



あたしが従姉弟だと答えれば驚(おどろ)いた反応をした瀬見くん、それに話に入ってくる覚。


瀬見くんは、あたしらのやり取りを見てハハッと渇(かわ)き笑いを漏(も)らす。



あたしらのやり取りを見て他(ほか)の反応がある方が珍(めずら)しいわけで、あたしは特に気にしない。






〈こいつら漫才(まんざい)コンビみたいだな〉



そう瀬見くんが思ってる事も知る由(よし)もない。






.

ページ１３「弦楽部(げんがくぶ)」→←ページ１１「狙わないでよ！」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す