杣の想い ページ47
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卒業式を終え，それぞれ退寮する手続きを終え，一人，また一人と寮を後にする。
第三教場には，制服を着たままの杣とAの姿があった。
『なんか，いざ卒業するって思うと，名残り惜しくなっちゃうよね。』
あんなにたくさん泣いて，辛かったのに。不思議。と教室を見渡しながら笑うA。
「A。」
初めて杣から呼ばれた名前に肩を震わせるA。
驚きに目を丸くし，「どうしたの？」と尋ねる。
「Aと出会って，一緒に過ごせてよかった。
Aと勉強して，食事して…。君に支えてもらったから卒業できた。
君と出会わなかったら，きっと無理やりにでも問題を起こして辞めてたと思う。
本当に，ありがとう。
…Aが好きだ。
大切だ。絶対に失いたくない。だから，俺と一緒に，これからを歩んでほしい。
君の未来を，俺にくれないか。」
まっすぐに目をみて伝えられた杣の言葉に，ゆっくりと杣に近づき，その手を取るA。
『私も，杣君と一緒じゃなかったら，ここまで頑張れてなかった。
支えてもらってたのは，私のほう。杣君が，大好き。
私にも，杣君の未来をください。』
「名前，呼んでよ。」
『ん，利希斗。』
照れるように顔を赤くして名前を呼ぶAに，ふは，と短く笑う杣。
帽子を取り机の上に置くと，Aの帽子を取る。
「こっち向いて？」
Aの顎に手を添え，少し伸びた髪に指を通し，膝を折り，身体を屈める。
目を閉じた二人の顔が，徐々に近づく。
「君たち，卒業早々クビになりたいのか。
…それとも，また私の生徒として教場に帰ってくるか？」
急に投げられた風間の声に驚き，重なりかけた唇を離し，入り口のドアを見つめる二人。
「大鷹さんの目にゴミが入ったのを取ろうとしました。」
余りにも苦しい杣の言い訳。
「仲がいいのは構わんが。」と前置きをし，二人に近づく。
「君たち二人は私が指導した中でも極めて優秀な生徒だった。
その実力に驕ることなく，職務に邁進しろ。
卒業，おめでとう。」
風間の言葉に，敬礼で返す二人。
同様に二人に向かって敬礼すると，踵を返し，いつものように革靴を鳴らし，教場を後にした風間。
二人は，普段一切笑わない彼の口元が，初めて少しだけ綻んだのを見た気がした。
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まるちゃん(プロフ) - KaNaNaさん» コメントありがとうございます！最後まで読んでくださり、ありがとうございます！これからも、こちらに遊びにいらしてくださいね。ありがとうございます！ (2021年2月11日 11時) (
レス) id: 727445f91f (このIDを非表示/違反報告)
まるちゃん(プロフ) - ナミヲさん» お名前にクスッと来てしまいました。向井さんのファンでしょうか？コメントありがとうございます！番外編も面白そうですね！検討してみます！ (2021年2月11日 11時) (レス) id: 727445f91f (このIDを非表示/違反報告)
KaNaNa(プロフ) - 完結おめでとうございます！とっても面白かったです！これからも頑張ってください！ (2021年1月29日 22時) (レス) id: d8ec937809 (このIDを非表示/違反報告)
ナミヲ - 完結お疲れ様でした！！2人のその後など番外編読みたいです！！ (2021年1月29日 20時) (レス) id: 7912cad76d (このIDを非表示/違反報告)
まるちゃん(プロフ) - さつちさん» コメントありがとうございます！あともう少しで完結するので、お付き合いよろしくお願いします！あたたかいお言葉、ありがとうございます！ (2021年1月27日 18時) (レス) id: 727445f91f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるちゃん
| 作成日時：2021年1月16日 22時
