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「ぅおっ、と」
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浮き上がっていた身体は少し離れた路地に落ち着いた。
煤や灰だらけではあるが大きな怪我は全くない。
それは上でまだ浮いているアイツと、中也と呼ばれた男のお陰だろう。
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「ったく、人使いが荒れェんだよ手前は」
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なにやら話してから俺の方をみたアイツはまた光のない眼に戻っていた。
それが少し残念だと思う反面「死んだ眼に戻ったな」と呟くとアイツは初めて驚いた顔を見せた。
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「お前らが誰でなにやってんのかは知らねェが、助けてもらったんだ。礼は言っとくぜ」
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捕まえるべき職であろうとなかろうと手を出せば多分俺は死ぬなと確信を持った。
そもそも浮き上がること自体無理だからな、普通。
見逃す..というか背を向けたところでアイツは最後の言葉を発した。
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「また会えるといいね、オニーサン、」
「!そんときは名無しサンの名前でも聞けんのか?それなら楽しみだな。」
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光のなかった眼から始まった名無しサンは最後の最後でただ、悲しそうに微笑んだ。
そしてソイツらはそのまま上へと消えた。
..
あの異常現象には聞き覚えがあった。
聞き覚えどころか警察学校時代からこっぴどく言われ続けてきた信じられない事実。
実際見たことなかったが..今、それを現実に見ちまった。
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「松田くん、っ!あなた怪我は?!大丈夫なの?!」
「ああ。傷一つねーよ」
「そう、、。でも、あの観覧車からどうやって..」
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あそこから飛び降りて無傷。
宙に浮いたまま消えていったあの二人。
非現実的な事実は俺の脳内に事実を事実として埋め込んでいく。
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「__..異能力」
「えっ」
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信じるかと聞かれれば信じないと答え、信じられないかと聞かれれば首を捻る。
色んなヤツらがそれぞれの事実を口にするからどっちにつくこともできやしねェ。
自分が思うならそれが事実だろ、っつったらすげーキレられたっけな。
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「ほんとにいるのかもしれねェな。異能力者っつーのは、」
「...松田くん、、あなたホントに大丈夫?病院行った方がいいんじゃない?」
「(この女、)」
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いつか、またどこかで会うかもしれねェ名無しの顔は年々薄れていった。
そんなこと考えてる暇がないほど忙しかったのも一つだ。
実際捜一に移動したしな、俺。
..
でもそれが三年越しに[同じ言葉]で思い起こすことになるなんて、誰も思わねェだろ。
少なくとも俺は心底驚いたってもんだ。
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作者名:夾 | 作成日時:2021年9月4日 11時