【暗殺教室】ねじれの位置【磯貝悠馬】 (ページ5)

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ねじれの位置が3つページ5

結局、殺せんせーと名付けられた彼を殺せる者は居らずチャイムというタイムアップが先だった。出た時には騒がしかった教室に戻ったらもう誰も居なくて夕日が机を照らしている。

帰らなきゃいけないのは分かっている。でも、この気持ちのまま帰ったら今の保護者に迷惑を掛けてしまう。自分の机に両手を置いてしゃがみ込んだ。

「…A」

声。よく知った声に顔を上げる必要も無し。聞こえないフリをしてそのまま床に座り込む。

「大丈夫か？気持ち悪い？」

そう言って近付いて来た幼馴染の手を弾いて立ち上がる。長い前髪をわざと垂らして目を合わせない。

「A、いい加減にしろよ。心配してんの分かれよ」

それでも無理矢理会話しようと試みる彼、磯貝悠馬が嫌で耳を塞ぐ。心配してるなんて嘘だ。偽善の固まりで出来た彼の言葉を信用してはいけない。

「何があったか話してくれないと守れないんだぞ！」
「守ってなんて頼んでないっ！！」

自分の上げた声にハッとした。髪の毛の間から覗いた彼の顔は酷く険しく、凄く悲しそうだ。だが今はそんな事どうでも良い。話してしまった。会話をする機会を彼に与えてしまった。鞄を早急に取ってこの世界から出ようと地面を蹴った。

「おい、待って！」

いきなり手首を掴まれて速度を急減される。その拍子に転んでしまい左腕を残したまま地面に座り込んだ。

「あ、悪いっ…！怪我は？」

焦った彼は捉えた腕を逃さず私の前へとやって来た。幼子が駄々を捏ねるみたいに顔を背けると困った様に彼は笑う。

「Aが急に他人への態度を変えた理由が知りたい。前はあんなに明るかったんだ、理由があるんだろ？」

グラグラ。優しく問い掛けられて心が揺らぐ。唇を噛んで甘い考えを外の世界へ放り出し冷静さを取り戻す。

「…はなして」

出て来た音は掠れていた。
悠馬は首を横に振って離そうせず話そうとする。やめて、体全身が彼に訴えていた。

「離してやれよ、磯貝」
「っ…前原！どうして、」

突然の声が何処から来た物かは分からない。でもこの世界に来訪して来たのはもう1人の幼馴染なのだとすぐに理解する。

「もう前のAじゃねーって事。俺らとコイツは…他人だ」

言葉は重い。持っている質量を悠馬にかざして攻撃する。

前の私じゃない。彼はそう言った。確かにそうかもしれない。明るくて、わがままで、それでいて他人思いだった私はもう何処にも居ない。

只々恐怖に呑まれていくだけ。