【暗殺教室】ねじれの位置【磯貝悠馬】 (ページ4)

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ねじれの位置が2つページ4

昼ご飯の後の5時間目、怪物の顔が薄いピンクになる時があり、それは恐らく奴が1番油断する時間。

其処をつくなんて、やるじゃん。

だけど、潮田渚の暗殺がそんなに上手くいくとは思えない。

────認めさせなきゃ

あの怪物はそんなに甘くない。

参

弍

壱

潮田渚はナイフを振るった。彼の持つ全ての殺意をそれに流し込む。だけどこの怪物はそんなに甘くない。彼の殺意を触手1つで受け止めた。

「…言ったでしょう、もっと工夫を」

────どんな手を使っても

瞬間。1秒を疑った。潮田渚は怪物に抱き着いたのだ。そして次に広がった音は、爆発。BB弾グレネード。観察しようと背筋を伸ばしたが、1番後ろのこの席からは状況を把握出来ない。諦めて背もたれに項垂れた時に同じ列から雄叫びが聞こえた。

「ッしゃあやったぜ！100億いただきィ！！」

確かあれは、寺坂竜馬。なるほど、主犯は寺坂率いる馬鹿3人組なのか。

考え自体は良い方だろう。自分達はコマンダーとして安全地帯で棒を振り、潮田渚に自爆をさせた。だけど此処の担任は怪物だ。そう上手く行く筈が無い。私は天井を見上げて真っ黒な彼を見つめた。

怪物の顔は、ド怒りを示している。

────シュシュシュ…バウッ

タイムを測ること0.5秒の事である。この怪物が持って来たのはこのクラス全員の家の表札だった。

「政府との契約ですから先生は決して君達に危害は加えない」

表札を滝の様に木目調の床に流した。前の席の奥田愛美が、小さな声で悲鳴を上げる。

「次また今の方法で暗殺に来たら君達以外には何をするか分かりませんよ」

落とし切った表札に感情なんて無い。悲鳴すら上げる事の出来ない彼らに同情の目を見せた。私の家、マンションだから表札無いんですけど。

「家族や友人…いや、
君達以外を地球ごと消しますかねぇ」

普段の温厚を偽った顔からは予想が付かない程の怒り具合に誰もが驚いたであろう。だけど、他人なんてそんな物だ。隣人が自分の悲鳴に気付かないのと同じで、こちらは隣人の邪悪さなんて知りもしない。

それくらい、人間という生き物は温度を持たないのだから。

グラリと歪んだ思考を戻す為に飴を噛んだ。誰も見ていない事を良い事に自分の胸元に手をやって慌てて鼓動する心臓を押さえ付ける。

そんな風に人間よろしく他人を褒めたって、相手は人を知らない怪物なんだ。

必ず裏切るに決まっている。

たすけて。

なんて聞こえない聞かない聞きたくない。