ねじれの位置が12つ ページ14
磯貝悠馬side
ビッチ先生の授業も終了し、すっかり外の空は紅色だ。教室には自分しか居ない。トンッ、と委員の仕事で纏めていたプリントを整頓させて立ち上がる。
「磯貝君、少し良いですか？」
教員室に向かおうとしたら殺せんせーの方から俺に話し掛けて来た。きっとタイムリーを図ったのだろう。
「はい、どうしました？殺せんせー」
俺は素直に問う。
「小野寺さんの事で少し。磯貝君も気にしている様なので何か知っているのかと思いました」
「あぁ、Aの事か」
殺せんせーは隣の席に座る。俺も席に着き彼の方を向いた。
「これから話す事はお互いに秘密という事にしましょう」
「はい、勿論です」
殺せんせーは話を続ける。
「皆さんの情報が入った資料を学校から頂いています。何故E組に来たのか、家族構成、連絡先、住所などです」
「…はい」
「ですが、小野寺さんの資料だけその殆どが欠けています」
はっ…？
驚きで足が動き、椅子の脚と掠れて音が漏れた。先生の瞳を見つめて詳しい説明を求める。
「彼女の資料に1年の秋頃に書き換えられた住所と緊急連絡先だけです」
何か知っていますか？
殺せんせーは俺にそう聞いた。急ぐ心臓を聞いて冷静になれと頭を支配する。
1年の秋頃…それはAの性格が180度変わってしまった頃だ。
「…両親が、亡くなったのは噂で」
事実、前に彼女が住んでいた家は取り壊しが決まっている。
そして噂というのはいつも大袈裟で両親が亡くなったという事実だけでなく、DVがあったとか、じさつしたとか、嘘を重ねていく。井戸端会議はいつだって残酷だ。
「なるほど。小野寺さんから何か聞いたりとかはしていますか？」
「いえ、丁度そんな噂が流れた時から俺や前原とも話さなくなりましたから」
「では前は磯貝君や前原君と仲が良かったんですね？」
先生は聞き出すのが上手い。俺が傷付かない度合いを計って問い詰めて来るのだ。
膝の上に置いてある両手を見つめて頷く。
「はい…前は、よく喋る子だったんです。いつも笑顔で堂々としてて、女王様みたいで…わがままだけど他人思いでっ…！」
気付いたら先生の触手は俺の頭の上にあって、俺の両手は顔を覆っていた。
「俺っ…どうすれば良いですか？」
守ってやりたいのに縦が無い。
頼って欲しいのに器が無い。
涙なんて出て来なかった。枯れきってしまったからだ。歯を食いしばって嗚咽を抑えた。
「磯貝君」
名前を呼ばれたので顔を上げる。
其処にあった表情は────
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作者名：詩季 | 作成日時：2019年1月6日 19時
