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Chapter ページ3

お役人――三多さんに案内されたのは大きな木造りの門だった。これは簡単には開かないねえ。女性はもちろん、男性の力でも簡単には動いてはくれなそうだ。


「久我様、私はここまででございます。ここから先は式神であるこんのすけがご案内致します。」


三多さんは私に深い礼をして、そのまま背を向けて歩き出す。
さてさて、三多さんが言っていたこんのすけとやらは、いったいどこへいるのだろうか。それよりもまず、私はどうやってこの門の中へ入ればいいのやら。


特に説明を受けていないが、まあ、それはなんとかなるだろう。
過信している訳では無いが、なんたって私なのだから。


「――早く案内してもらってもいいかな、こんのすけくん」


三多さんが去った頃に感じた、頭上の重み。猫のような重さは、温かさも与えていてどこか安心させてくれる。しかし、私は安心を求めている訳では無い。


「審神者様!ご存知の通り、わたくしめはこんのすけでございます!」
「ああ、ああ。わかっているよ。だからこの門を開けてはくれないか」


淡々と紡ぐと気を落とす素振りを見せずにこんのすけくんは私の頭の上で縦に一回転する。
するとびくともしなかった重たい門が古びた音を立てながら、ゆっくりと開いていく。


「これは、これは。」


手入れのされていない地面は草が伸び、私の脹脛程まである。本来なら風景として成り立っているはずの大きな木も、今じゃただ不気味さを引き立たせているだけだった。


「こんのすけくん。私はお役人から何も説明を受けていないのだけれど。これはいったいどういうことかな?」


もっと風流のあるものだと思っていたのは、私の勘違いだったのかねえ。


「ここは本丸ですが、俗に言う……"ブラック本丸"と呼ばれるものです……。」
「ぶらっく、ねえ。これはまた、嫌な雰囲気だことで。」
「前任の行動は目に余るものでした……。何度か政府の者が止めるためにやって来ましたが、それも、」
「ほう」


見る限り、前任は居ないようだ。つまり、ここには刀剣男士しかいない、という事になる。
迷いもなく進んでいくと、どんよりとした雰囲気が包み込んだ屋敷があった。

ここから少し離れたところに大勢の気配がする。ということは、皆そこへ集まっているのだろう。
こんのすけくんはいつの間にか私の頭から降りて、足元を同じ速さで歩いていた。

通りで身軽になったわけだ。


「そんなに不安そうな顔をしないでおくれ。私は大丈夫さ」

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伽倻(プロフ) - メンタル弱い系人間さん» コメントありがとうございます。図々しくなんてありませんよ!面白いと言って頂けてとても嬉しいです。応援ありがとうございます。頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。 (2018年1月28日 16時) (レス) id: fb5b5e8505 (このIDを非表示/違反報告)
メンタル弱い系人間 - 初めまして!!図々しいかもですがこのお話とても面白いです!!応援しています!!伽倻さんの作品の良さがもっと伝わって欲しいです!! (2018年1月28日 15時) (レス) id: ba1024f461 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:伽倻 | 作成日時:2018年1月24日 23時

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