No.104 ページ30
谷地sideから川崎sideへ変わります〜
清水先輩や、A先輩はいつでも冷静沈着だ。清水先輩はクールビューティな見た目そのままに積極的に選手に話しかけに行くタイプではないしA先輩は選手といつもからころとよく笑ってよくふざけているけれど、どこか己を俯瞰して見ている。2人とも少しの事では動じない。経験と胆力がものを言っている。
そんなかっこいい先輩の背中が、今はとても小さく感じる。
「えっ、今1番と5番ぶつかった?」
和久南戦の中途。
、は、。息が詰まる。呼吸の仕方を途端に忘れる。ぶつかった。大地さんと田中が。怪我?救護室、いや、救急車?私が呼ぶのは違う?2人が離脱したらWSが2人も抜ける。どうしよう、。
ごめんなぁ潤、かっこ悪いとこ見せちゃったな
病室で困ったように笑う兄の姿が脳裏にこびり付いて取れない。
あれからずっと私は変われてない。
息苦しい。酸素が欲しい。は、は、と呼吸が短く浅くなる。
谷地「A先輩!」
名前を呼ばれてようやく酸素が肺に大量に取り込まれた。振り返ると仁花ちゃんがぎゅっと唇を噛んでいた。あぁ、ダメだ。後輩にこんな顔させちゃ。私がしっかりしなきゃ、私が、私が…。
ちょっと上手いからって
誰もがアンタみたいに必死にやってるわけじゃない
正直、迷惑だよね。あんなに頑張られても
振り払えたと思えた記憶は小さなスイッチ1つで簡単に思い起こされた。刹那湧き上がった苦しさに心臓を握りつぶされる。
谷地「私!澤村さんのところに行ってきます!」
仁花ちゃんの声だけがやけに耳に入る。ぎゅうと、私の手を掬う仁花ちゃんの手は温くて私の手の冷たさを思い知った。暖かくて血色の良い仁花ちゃんの手に包まれているのはぎう、と強く握られて真っ白になった冷たい私の手。
『えっ、あ、私が行くよ。仁花ちゃんはここで、みんなを…』
谷地「……イエッ!A先輩は、心配せずにここで待っていてください」
するりと抜けていった手と走り出した仁花ちゃん。
嶋田「澤村大丈夫か〜…?」
冴子「てか、Aだいじょぶか!?顔真っ白だぞ!?」
ふ、。ゆっくり呼吸が戻っていく。体温は、いつの間にか頼もしくなってしまった後輩が分けてくれた。
そうだよ、1人なわけ、ないんだ。
『………大丈夫です。本当に。今はもう、1人じゃない』
目線の先にはプレッシャーに圧迫されて思い詰めた顔の縁下。さっきの私、あんな感じの顔してたのかな。
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