お前の隣は俺だけがいい (ページ4)

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慕う理由ページ4

白目を剥いて、誰が見ても死んでいるとしか思えない彼女の首に指を当てて脈を確認する。勿論、鼓動は感じられなかった。

ボスはソファで眠っている葛葉を叩き起して、「説明しろ」と低く言葉を吐いた。葛葉は怠そうに体を起こして、死体を見つめた。

「そいつ、ボスの書斎にいて、ローレンはシャワー入ってて、PCに触ってたから、銃向けただけ。」

「それだけだったら、死なねぇよ」

「はぁ。声掛けたら逃げたから撃った。」

それでも納得いかないのかボスは口を閉じて床を見つめるだけだった。私は戸惑う葛葉を抱きしめた。

『そっか。葛葉は守ってくれたんだね。ありがと。もう部屋行ってていいよ。』

「うん。」

部屋に歩いていく葛葉の背中を見送って、未だ動かないボスの頬に手を添える。

「今の説明、お前納得いった？」

『いってないよ。逃げたから撃ったんだったらうつ伏せに倒れてるはずなのに、あの子仰向けに倒れてるし。何かはあったのかなって。』

「俺はどうしたらいい？」

『まず、処理の連絡は私がするからローレン探してくれる？』

「分かった」

死体の処理は、素人がすると時間もかかるし証拠が残る。私は
携帯を開いて便利屋に電話を掛けた。「人形」と一言だけ伝えると「10分後」とだけ返ってきて電話は切れた。

黒い袋に入れられて、ピクリとも動かない彼女を見つめる。緩くウェーブのかかった栗色の髪に、透き通る白い肌、色を失っても綺麗な形の唇。死してなお、美しい彼女は、生きている時はもっと美しかったのだろう。

ボスのPCを触っていたということは、どこかのギャングの一員なのだろう。ふと、自分がこの袋の中に横たわっている姿を想像して、頭を抑える。

「大丈夫ですか？」

『大丈夫。お金はいつもの所に入れてあるから。いつもありがとう。』

「いえいえ。」

ボスは、不必要に命を奪う事をすごく嫌う。それに、死んだ者に対しての礼儀を重んじる人。だからあんなに葛葉にキレた。いつもは、警察を轢いたり他のギャングの人を攫ったり好き放題するけど、越えてはいけないラインをしっかり持っている人だからあんなに慕われるのだろう。と常思う。

ポケットに入れてた携帯が震えて、手に取る。ボスから「ろーれん、ゴミ箱で散々殴られた状態で発見。」なぜ、殺したのは葛葉なのにローレンが殴られてるのか。

分からないままではボスのイライラが募っていくだけ。私は葛葉の部屋の扉をノックした。