そして、現在 ページ47
nao side
全部話し終わったAは、ふぅ、と一息ついて、
『わたしの話は以上です。
聞いてくれて、ありがとうございまし、たっ!?』
Aが言い終わる前に、全力で、力いっぱい、Aを抱きしめる。
『え、ちょ、小坂さ――』
菜「今まで……よう頑張ったなぁ……」
Aが途中で見せてくれた頭の傷や、背中に残る傷、火傷、痣を思い出しながら、心の底からそう言う。
大丈夫だよ、とか、もうひとりやないで、とか、言いたいこと、たくさんあったのに……小さくて、あまりに細すぎるAを抱きしめたら、それしか出てこなかった。
この小さい体で、これまでどれほどの苦しみを、悲しみを背負って、生きてきたのだろう。
どれほどの傷を負いながら、それでも、ひとりでやるしかなくて、どれほど涙を飲み込んできたのだろう。
菜「ほんまに……頑張ったなぁ……まだ、小さかったのに、お母さんを亡くして……お父さんからは暴力を受けて……それでも今まで、ゆきちゃんを守りながら、よう生きて、ここまで来てくれたなぁ……」
気づいたら、菜緒もまなも、涙がぽろぽろ流れていて、
愛「ありがとう……頑張って生きてくれて、アイドルになってくれて、私たちに話してくれて……信用してくれて、ありがとう……」
まなが優しくAの頭を撫でる。
『……なんでそんなに、優しいんですか……?』
愛「え?」
『だって、わたし……酷い態度、取り続けたのに……まなもさんのことだって、突き飛ばして怪我させた……渡邉さんが善意で手を伸ばしただけで怯えた……冷たいことも、いっぱい言ったのに……それなのに……』
菜「当たり前やろ。大事な同期や。……それに、Aに事情があることくらい、みんな知っとるで。……遠ざけるのも、キツかったやろ?ひとりで、ようやったなぁ……偉いなぁ……」
『でも、だって……』
愛「でももだってもないよ。……本当に、頑張ったね。もう、頼っていいんだよ。もう、ひとりでやらなくていいんだよ。……もう、ひとりじゃないんだよ」
菜「これからだって遅くない。メンバーと、仲良くなっていけばええ。菜緒たちだっておる。やからもう……傷つかんくてええんよ」
『……まなも、さん……小坂さん……』
愛「なあに?」
『ずっと……我慢してたんです。痛いのも、辛いのも、誰かに、頼りたいのも、全部……でも……
もう、我慢しないで、いいですか……?』
菜緒とまなが頷くと、Aはまた、声を上げて泣いた。
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123 - テスト (2021年12月1日 22時) (レス) id: 3aa6a8a473 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零 | 作成日時:2020年11月6日 18時