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とまあそんなこんなで、まなもさんの家に来ることになってしまった。
『……まあ、ゆきが楽しそうだし、いっか……』
菜「いいお姉ちゃんやなぁ」
『……小坂さん』
菜「ごめんな、Aがゆきちゃんの教育に悪いことはしないって学んだんよ」
『はぁ……やっぱり』
菜「でもちゃんと来たんやな。結局理由つけて来なかったらどうしようかと思ったわ」
『わたしもそうしようとしましたよ。……でもゆきが、きらきらした目で「おねーちゃんいこう、はやくはやく」って急かして……逃がしてくれませんでした』
菜「ほんまに、ゆきちゃんのこと大好きやなぁ。……自分のことが二の次になるくらいには」
『……なにが言いたいんですか』
菜「別に。ただ、Aのことをちゃんと知りたいって、それだけやで。
……あと、ゆきちゃんのおかげでAがちゃんと話すようになってくれてラッキーやなぁとは思っとるけど」
愛「できたよー!」
菜「まあ、せめてご飯くらいは食べてってや。……ゆきちゃん、心配してたで。もちろんなおたちも」
『……わかってますよ』
愛「はい、どうぞ」
『……!これ……』
愛「ハンバーグ。口に合うといいんだけど」
『……いただき、ます……』
「いただきまーす!」
ハンバーグを箸で一口サイズに切って、口に運ぶ。
すると……
『……っ!』
そのままもう一口。さらに一口。白米も一緒に食べる。
箸が止まらない。
だって、だってこれは……。
「おねーちゃん……?なんで泣いてるの……?」
『……え?』
ゆきの指摘を受けて、慌てて頬に触れると、確かに水の感触があった。
そっか……そりゃ、こうなるよなぁ。
大丈夫と言う代わりにゆきの頭を撫で、再びお箸を持って、今度はゆっくりと口に運ぶ。
ああ、やっぱり、これは。
……無意識のうちに、しかもゆきの前で泣くのも仕方ない。
『……おいしい、です。……すごく……おいしい、です……っ!』
ぼろぼろと流れる涙をふくこともなく、まなもさんにただそれだけ言って、ハンバーグに箸を伸ばす。
箸が止まるはずがなかった。涙が止められるはずがなかった。
愛「そっか。……よかった」
——だってこれは、お母さんのハンバーグと、まったく同じ味なんだから。
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123 - テスト (2021年12月1日 22時) (レス) id: 3aa6a8a473 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零 | 作成日時:2020年11月6日 18時