日陰少女の日向坂記録 (ページ18)

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『……はい、はい……わかりました。はい。ありがとうございます』

叔母さんに会ってから数日が経ち、Aも退院した。

あの日の話はまなにも言った。

悲しそうに、「そう言うことだったんだ」って言っとった。

『……』

菜「……電話？」

『小坂さん……まあ、はい。
ゆき、おいで』

「おねーちゃん、なぁに？」

『あのね……

叔母さん、天国に行ったって』

「……そっかぁ。
幸せに暮らせるかなぁ」

『うん、大丈夫だよ、天国だもん』

「そっか！」

ゆきちゃんはまなのところに走っていった。

……それより。

菜「『天国』なんやな」

『……？』

菜「『地獄』やなくて、『天国』なんやな」

Aにとっては叔母さんは『悪い人』のはずで。

だから気になった。

『……』

菜「無視したらゆきちゃんに言いつけんで」

『っ……』

無言で去ろうとしたAに言ったら、ピタッと止まった。

なるほど、ゆきちゃんの教育に悪いことはしないんか。覚えとこ。

『……地獄は、悪い人が行くところでしょ』

菜「……叔母さん、どんな人やったん？
悪い人じゃなかったんか」

『……大切な人かと言われれば、違います。あまり叔母さんと話したこともありませんし。
……でも、昔、よく遊んでくれて
わたしに気を遣って、わたしにバレないようにご飯を届けてくれたり、わたしを助けようと頑張ってくれた
……そんな人です』

菜「……！？」

……なんや。

全部、バレとったんか。

菜「……そっか」

苦笑しながら、Aの頭を撫でる。

驚いたような顔をした後、手を避けるようにゆきちゃんのもとへ行った。

けどな、なお気づいとるからな

なおの手を避けるとき、一瞬躊躇ったの。

……なんで叔母さんがご飯を届けてくれていたのか、なにから助けようとしていたのか。

なおはもうだいたい知っとるし、Aがあえて伏せて言うんやったら無理には聞かんよ。

……でも。

いつか、ちゃんと、Aの口から改めて聞かせてな？

それまで、なおも頑張らなあかんなぁ。

A曰く、『いい人』が行くらしい天国がある空を見上げながら、

叔母さんに語り掛けるように、そう誓った。