【今日から俺は】口先八丁。 (ページ1)

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一、『君子危ういから近寄るな・上』ページ1

「いやあ、憧れの理子先輩のお役に立ちたいのは山々なんですが、無い袖は振れません。喧嘩に駆り立てられそうな阿呆なんて数人しか知りませんから」

「その数人を紹介して欲しいの！」

「そもそま道場対決なら部外者使っちゃダメなんじゃないです？ヤですよ私、理子先輩にチンピラ紹介するの」

珍しく理子先輩の方から私を尋ねてきたのは、今から十分前、昼休みが始まってすぐのことだった。

何でもお家の道場が他の道場に決闘を申し込まれたけど、勝てそうなメンバーが足らずピンチなそうで。弱い道場なら潰れた方がいいような気もするけど、理子先輩の道場なら話は別だ。

それはそれとして、私の本業はあくまで弁士兼情報屋さんだし、何かと噂に事欠かないある意味でのお得意様・理子先輩にヤバい奴らを押し付けるのには罪悪感が募る。

そんなヤバい奴らを押し付けるなら相手の道場に嫌がらせして全員戦闘不能になって頂くとか、圧力かけてあちらから辞退して頂くとか、そういう『薄暗い方法』を取る方が何倍も楽だと思うのだ。

まあ理子先輩はそういうのイヤなんだろうけど。

「取り敢えずここを切り抜けたいの。あんな卑怯な奴らに負けるわけにはいかない」

「わーかりました……。じゃあ穏便に追加メンバーを見つける方法を考えましょう。そこそこ強くて、赤の他人に手を貸してくれるようなお人好しの単純バカ……じゃない、優しいイケメン探しましょう。
……都会出てホストクラブ回ってれば一人くらい見つかるんじゃないですか？」

「Aちゃん！」

流石に調子乗り過ぎたか。
探す方法ならいくらでも思い付くけど、見つかる可能性は正直ゼロに近いだろう。

女子が困ってたら手を貸してくれるタイプの馬鹿となると紅高の番長達二人くらいしか思い付かない。

転校早々ヤクザに喧嘩売った転校生二人とか、そこら辺ももしかしたらもしかするかもしれないが、理子先輩に万が一好意を抱かれると潰すのに手間取りそうだ。

「道場の人達に不良コスして適当に絡んでもらって、そこを助けに入ったイケメン連れ込んで入門を迫る。理子先輩の為ならこの雛森、正々堂々正面から策を弄してご覧に入れましょう！」

さすがAちゃん、頼りになる！と抱き着いてくれた理子先輩に免じてこの件に首を突っ込むことになった私だけれど、正直時を戻せるなら好感度落としても断っとけと忠告したい。

ここから私は、何人ものヤバい奴と関わることになるのだから。