27話ーオルゴール ページ28
ー数日後ー
You side
暗い廊下を歩き、自室のドアを開け、一番にベットに飛び込む。医務室よりもやっぱ自室の方が落ち着くな、なんて当たり前のことを考えながら軽く寝返りを打つ。
明日からまた仕事だ。先輩たちも良い人で、とてもやり甲斐のある仕事。だけど…怪我が治ったは良いものの、仕事で皆んなに技量的に置いていかれたらどうしよう、なんて思っただけでもジワリと涙が滲む。
…あぁ、ダメだ。心が弱ってるせいで、止めようと思っても涙止まんないや。もう…いつからこんな弱くなったっけ。前は涙なんて、ちょっと我慢するだけでピタッと止まったのに。そもそも泣くことなんて無かったのに。
(…ま、そんなこと考えても仕方ないか)
机に置いてあるオルゴールに寝転がりながら手を伸ばす。ジジジと巻いて離すと、懐かしいメロディが耳に流れ込んでくる。…隣の人に迷惑かしら…？防音だと良いなぁなんて呑気に考えながら、人差し指で涙を拭う。…疲れた状態で寝転んだからか、段々と瞼が重たくなる。
(このまま寝てしまおうか…？)
そう思って、静かに目を閉じようとした…その瞬間だった。
「…っ！？ゴホッｹﾞﾎｯｯ…ｯﾌｰハー…ｯｹﾞﾎｯ」
咄嗟に口に手を当てたが、抑えきれなかった血がシーツに落ちてしまった。…明日シーツ洗わなきゃじゃん…と場違いなことを考えながらヨタヨタと洗面所に向かう。咳を無理やり止めようとしても、より苦しくなるだけ。
(…今日寝れるかな)
.
数分経った時、ようやく咳はおさまったが、不安は高まる一方だった。
______明らかに、頻度が高くなってきている。
前は治るのに1分もかからなかったのに。血なんて出なかったのに。咳が出るたび、嫌でも自覚させられる。
…私にはもう、時間なんて残されていないのだ、と。
その度にどうしようもない焦燥感に襲われる。何も急ぐことなどないのに。死んだって、誰も悲しまないのに。…死ぬのが嫌だって思うのは、ただの防衛本能なのだろうか…？
再度ベットに飛び込み、目を閉じる。…これからも健康でいて、きんときも思い出してくれて。知んだと思ってた人たちみんな生きてたらな。…みんなに見守られながら、寿命で息を引き取れたらな。…そんな叶うはずのないことを想像する。
さっき巻いたオルゴールが、もう止まりそうになっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 475人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Bearl - 萌木さん» なるほど…！教えてくださりありがとうございます！通知は本当にすみません…消えたらと思うと怖くって…萌木さんまだ読んでくださっていてありがとうございます。これからも頑張ります！ (2023年2月12日 17時) (
レス) id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
萌木(プロフ) - 一応更新の通知自体は来ます。ただ非公開更新しているからではなく話を非公開にしているからだと思います。 (2023年2月12日 17時) (レス) id: 7b477ee6df (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - あずきのもちさん» 返信遅くなってしまってすみません…！ご意見ありがとうございます！テスト、お互い頑張りましょう！ (2023年2月12日 11時) (レス) @page34 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
あずきのもち(プロフ) - コメント失礼します〜。私的にはどっちの書き方も好きなので、主様のお好きな方でいいと思います！あとテスト大変ですよね...私も2月にテストがあるのでお互い頑張りましょう！ (2023年1月29日 18時) (レス) @page35 id: 54d9d03467 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - 萌木さん» どうぞどうぞ！！心に残る言葉なんて思っていただけたなんて…！すっごく嬉しいです！(返信遅くなってしまってすみませんでした…！) (2022年10月30日 20時) (レス) id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Bearl | 作成日時：2022年6月26日 10時
