3話 いわゆる俗称かまぼこ隊 ページ5
日も暮れてきたころ。Aは藤の家の前で立ち尽くしていた。
それは、何やらとんでもない音が各所から……
これは、100%ほかに隊士がいるパターンだ。
このにぎやかさを聞けばわかりきったことである。もう悟っていた。
『す、すみません……。』
やや控えめに戸をたたいた。
「はい。」
すると出てきたのは、優しげな雰囲気のおばあさん。
こんな広い屋敷を一人で切り盛りしているのだろうか。
『あっ、暮れ時に申し訳ないが……。』
時間帯からして夕餉時、準備などしている途中で呼び出してしまったのなら申し訳ない。
屋敷からはそこはかとなくいい匂いがした。思わずAの腹の虫も鳴く。
「おに狩り様ですね、どうぞ。ちょうど夕餉の準備もととのっております。」
『あっ、ありがとうございます。』
導かれるまま、屋敷へはいると真っ直ぐ、広い部屋の前へと案内された。
食事処だろうか。………正直とてもうるさい。
屋敷の外で聞こえた声たちは、どうやらこの部屋からだったようだ。
叫ぶ声、怒鳴る声、なだめる声、多種多様である。そして妙な気配もひとつ。
……しかし騒がしい。飯はもっと静かに食べるものだろう??
『……。』
Aは心の中で深く、ため息をついた。
知らない人との食事程、辛いものは無い。しかもこんなに騒がしいと来た。
こんなに騒がしい隊士もそう珍しい。
『し、失礼す――。』
「猪突猛進!!!!!!」
『!??!???』
意を決して扉に手をかけた。がトビラは開かれることなく倒れおちる。
次の瞬間Aの横を何が通り過ぎた。
早い。が全く目に追えないわけでもなかった。なにか、こう毛むくじゃらなものが……
一体なんだったというのか、後ろを振り向くと
『は?!猪……。』
あまりにも素っ頓狂な声が出た。
猪?人間の体の生えた??えっ?イノシシ人間???!?
「わぁあ!すみません、すみません!コラ伊之助!!」
「炭治郎ー!!また天婦羅とられたよぉおぉおお!!!」
続いて目に入ったのは黄色い頭と、耳飾りをした少年。
この屋敷にいるということは、当然鬼殺隊の隊士である。
また、Aを見るなり少し固まった。
「た、炭治郎……これってまず、」
「すみません。怪我は、大丈夫ですか??」
黄色い頭の少年の言葉をかき消すように、耳飾りをした少年が口を開いた。
『ま、まあ……。』
怪我以前にびっくりした程度なので、支障はない。
ただ黄色い頭の言葉だけだけが妙に引っかかった。
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作者名:八咫烏@地獄鴉 | 作成日時:2019年9月15日 12時