Act.1 ページ10
王国で一等高い塔には、とある噂が付いて回っている。それは呪われた化け物の女が、何千年もの間たった独りで暮らしているというもの。その女は何千年も昔に産声を上げて以来、若々しい娘の姿のままに歳を重ね続けているとも。
「初めまして」
塔の部屋の窓から街を見下ろす女に、柔和な男が微笑みかける。けれど女は男に目もくれず、凍えるように冷たい表情が温まることはなかった。
「お前、23代目の坊やだろう。私によく自慢してたよ。『とても賢くて優しい子だ』ってね。あの男はどうしたのさ」
すると男は、穏やかな表情を少しだけ沈めて眉を下げる。その様を見て、女は察した。「ああ、またか」と。けれどその
「……次に代わったってところか。おめでとう24代目」
「ありがとうございます。けれどわたしの名前は“24代目”ではなく“ジェンティレ”です。あなたの名前は?」
「私の名前なんて、ないよ。とうの昔に忘れた」
「――なら、あなたのことをカロスと呼びましょう」
女の自嘲めいた笑いを覆うように零されたのは、名前。カロスという名前を贈られた女は、窓に向けた身体を振り向かせて目を見開き、ジェンティレを見た。
「
「はい。カロス、わたしがあなたを“終わり”にします」
それはまるで、新しい息吹を吹き込まれたように。彼女の癒えることのない心の傷に沁みた。
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芙蓉(プロフ) - 風姿 花伝さん» 嫉妬するくらいだなんて……本当にありがたいお言葉です。私の作品たちを美しいと仰って頂けることが何よりも励みになります!これからも精進して参りますので、どうぞよろしくお願い致します (2017年12月14日 19時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
風姿 花伝(プロフ) - 嫉妬するくらい良い作品ですね。芙蓉様の書くものはどれも美しく、いつも感服させられます。更新頑張ってください。 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 93face14bb (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - ゆ〜☆+゜さん» あっ、ありがとうございます……!こちらのミスでした。今すぐに直します!文章を綺麗だと仰って頂き、誠にありがとうございます。 (2017年11月5日 21時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
ゆ〜☆+゜(プロフ) - 文章が綺麗にまとめられていて素晴らしいと思います。!誤字?なのかもしれませんがLact.6の四行目、「せ」が抜けていませんか?こちらの間違いでしたら申し訳ないです(;^_^A (2017年11月5日 21時) (レス) id: ea412efe3d (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - シマリスくんさん» コメントありがとうございます。急いで書いて色々と書き足してしまっていますが、そう言っていただけて幸いです。まだまだ作品が揃っていませんが、楽しんで頂ける作品を書けたらと思っております! (2017年11月5日 20時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芙蓉 | 作成日時:2017年11月5日 18時