��Act.4 ページ13
誓いを立てたあの日から、ジェンティレはカロスに仕えている。昼間は医者として都で働き、それ以外の時間の全てをカロスへの奉仕に費やした。
するとカロスの心にも、微々たるものながら変化が訪れる。冷たい氷に包まれたカロスのそれは、ジェンティレによって何十年もの時を経ながら少しずつ溶けていったのだ。
「あの悪夢を見なくなった」
ジェンティレの淹れた紅茶を飲みながら、カロスは言う。本来ならばカロスは食事や睡眠を必要としない。けれどジェンティレは彼女に人間としての生活を与えた。それはカロスの心を確かに癒し、“人間”たらしめる感情を蘇らせる。
「それは良かった。あなたが平穏に暮らせるのであれば、それに越したことはないです」
ジェンティレのかつては鮮やかであった檜皮色の髪には白いものが混じり始め、顔には皺が刻まれていた。彼の老いは明らかな年月の経過を2人に見せつけながら、それでも2人は見て見ぬ振りをするかのように、穏やかに暮らし続ける。
「……人の命は、儚い」
カロスはカップをソーサーへ置くと、そう呟いた。
“死”を恐れ、永遠の
「こんな病める呪われた肉体を引き摺ってまで、あの愚か者たちは生きたいと願うのだろうか」
「人は、賢くも愚かで脆弱な生き物ですよ」
静かに話を聞いていたジェンティレが、囁くように口を開く。カロスはそれを心得ていたように、彼の言葉に耳を傾けた。
「人は孤独に耐えられない。だから永遠の別れを意味する死を恐れてやまず、愚かになってしまうのです。きっとあなたには分かりますまい。それで良いのです」
「……ならば、お前はどうなの？」
ジェンティレは曖昧に笑ってはぐらかす。けれどそれに“死”への恐怖は見られず、カロスはどこか安心した。「この男になら、殺されても良い」と。そう思えた。
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芙蓉(プロフ) - 風姿 花伝さん» 嫉妬するくらいだなんて……本当にありがたいお言葉です。私の作品たちを美しいと仰って頂けることが何よりも励みになります！これからも精進して参りますので、どうぞよろしくお願い致します (2017年12月14日 19時) (
レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
風姿 花伝(プロフ) - 嫉妬するくらい良い作品ですね。芙蓉様の書くものはどれも美しく、いつも感服させられます。更新頑張ってください。 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 93face14bb (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - ゆ〜☆＋゜さん» あっ、ありがとうございます……！こちらのミスでした。今すぐに直します！文章を綺麗だと仰って頂き、誠にありがとうございます。 (2017年11月5日 21時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
ゆ〜☆＋゜(プロフ) - 文章が綺麗にまとめられていて素晴らしいと思います。！誤字？なのかもしれませんがLact．6の四行目、「せ」が抜けていませんか？こちらの間違いでしたら申し訳ないです(;^_^A (2017年11月5日 21時) (レス) id: ea412efe3d (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - シマリスくんさん» コメントありがとうございます。急いで書いて色々と書き足してしまっていますが、そう言っていただけて幸いです。まだまだ作品が揃っていませんが、楽しんで頂ける作品を書けたらと思っております！ (2017年11月5日 20時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芙蓉 | 作成日時：2017年11月5日 18時
