誰ですか【d!】 (ページ39)

今日:98 hit、昨日:53 hit、合計:71,084 hit

039 ページ39

『ただいま』

そういって家の中に入る

親は両方とも夜遅くまで働いているため、家には私1人しかいない

……はず、だった

「おかえり」

そう聞こえてきて私は肩を揺らした

慌てて平常を取り繕いリビングのドアを開ける

『びっくりした、お母さん今日は早かったんだね
　連絡来てなかったよ……？』

「ええ、今日は早かったの
　連絡？ああ、するの忘れてたわ」

でも別にいいでしょう？と笑うお母さん

親が早く帰ってくるんだったらお茶会なんて参加しなかったのに

"良い子"じゃなきゃいけないのに、

「それにしても今日は遅かったのね
　学校で何か用事があったの？」

『うん、図書室で少し本を読んでいたの
　ほら、お母さんも褒めてたじゃん』

『我々高校の図書室の広さ』

「ああ……ええ、そうね
　それならよかったわ」

「そういえば勉強の方はどうなの？」

友達はできたのか、学校は楽しいのか、じゃなくて"勉学"を先に聞くお母さん

まあ、そういう親だし

なんて、心の中で自問自答をしてから笑顔で答えた

『全然大丈夫だよ
　前の学校で習った範囲だから今回も100点は全部取れそう』

「…そうなのね
　やっぱり転校しない方が良かったのかしら」

『……………どうして？』

「だって今の学校も偏差値は高いとはいえあそこには敵わないじゃない
　Aの頭が悪くなったら……なんて考えるとゾっとするわ」

『お母さん、心配しすぎだよ
　ちゃんと予習復習はしっかりやってるし』

「…そう？ならよかったわ
　あ、夜ご飯は食べに行きましょう？」

『うん、じゃあ着替えてくるね』

部屋に入るとはぁ、とため息をついた

何とも言えない疲労感が私を襲う

そのままずるずるとドアにもたれかかるようにして座り込んだ

『…………』

今回は言い訳が効いたけれど次からは効くかどうかわからない

下手したら登下校を迎え……になる可能性だってある

…それは嫌だ

せっかく友達ができたのに

『…帰りはあんまり居残らない方が良いのかも』

居残るとしても連絡してからにしなきゃ……

私は制服の裾をギュっと握りしめた