【文スト】もしも貴方が世界から消えたとしたら【短編集】

与謝野晶子:誰なのか ページ11

_____目の前が暗くなる。


異能力の発動が失敗し、少女は死んだ。


与謝野「・・・は、」









与謝野晶子は瀕死の者を完全な状態に出来る。


だから今回もいつも通り、瀕死の一般人を異能力で治そうとした。


・・・が、どうにも異能力が発動しなかった。


_____死ぬ直前、麻酔が効いてるはずの少女は、驚くことにしっかりと目を開いてこう言った。




『ざまぁみろ』




少女はその後、何事もなかったかのように、安らかに逝った。



後日調べれば、その少女は戸籍のない孤児で、とある組織に探偵社への復讐のための駒となっていたことが分かった。


それにより、与謝野が責められることはなく、次第にその事件も落ち着いたのだった。








与謝野「なるほどねェ」


与謝野は終わったはずの自分の事件を思い出す。


与謝野「アンタが最期に言っていたのはコレかい・・・」


医者になりたての頃、一人の少女を完治しきれず大きな傷を残してしまったことがあった。


与謝野「背中に大きな一文字、そりゃあ恨まれるわけだ」


その傷も、異能力があれば綺麗に治せたはずなのに、その時も異能力が発動出来なかった。


与謝野「妾なら、どんな怪我も治せるって愚かなことを言った罰さ」


どんな怪我でも、のはずが。


少女には異能力無効果と同じく、異能力を吸収してしまう体質があり、異能力そのものを無かったことに。


故に少女は救われずに、嘘をついた与謝野を恨んだ。


_____背中に傷を残した少女は、与謝野の心にも大きな傷を与えたのだ。

国木田独歩:すれ違い→←江戸川乱歩:ビー玉

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す