尾崎紅葉:最初から ページ8
この家には、まだ少女と呼べる者が当主としてその座に座っていた。
代々、霧雨家はマフィアと深い関係にあり、時として匿うこともした。
その当主を幼い頃から見てきた紅葉は、当主である少女、Aに尋ねた。
紅葉「Aは、外の世界を見たいとは思わんのか?」
『外・・・ですか』
動かしていた手を止め、紅葉と向き合う。
『紅葉殿は外の世界とやらに何か憧れが?』
Aの目は黒く濁っていた。何も瞳に映さない。
紅葉「・・・いや、ただの質問じゃ」
『そうですか』
紅葉「思えばAは生まれてから1度も外に出たこともなく、この家の地下で過ごすことのみ。それは楽しいか?」
Aは暫し考え込み、能面のように笑う。
『ええ、とっても』
その笑みは、紅葉ほどの人物でさえも背筋が凍るものだ。
『ああ、もう遅い時間です。お帰りになさるといい』
呼びつけられた使用人にあとは任せ、Aは座ったまま見送る。
「尾崎様、本日はありがとうございました」
「当主様も喜んでおいででしたよ」
そんなことを二言、三言言われて帰される。
紅葉「喜んでいた、か」
あのAの笑みには喜びなどない。使用人達はAを恐れていることくらい紅葉とて知っている。
霧雨家__________それは、代々当主が化物の力を持って生まれ、その一生を地下で過ごす狂った家系。
紅葉「忌々しい・・・!!Aさえ外に出たいと言えば私は・・・!!!」
もし1度でもAが、家という監獄から逃げたいと言えば、いつでも助け出せる。
・・・が、それももう無理だろう。Aは光を知らない。
Aを誰よりも知っている紅葉は知っている。
いくら膨大な知識を持とうと、Aが何も知らないことを知っている。
何も知らず、何も持たない者に何を言っても無駄なのだ。
これは最初から、救う道すら無い哀れな少女の話。
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黒月夜*(プロフ) - 七海@月と星−−君と幸福な世界さん» 駄作なわけないじゃないですか!!そしてまさかのBlu-rayの予約・・・!? (2019年3月13日 23時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - コメントありがとうございます!!ゆ、遺言!?死なないでください!!というより、遺言がそれでいいんですか?! (2018年12月13日 22時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
河童系人間。(プロフ) - むり…尊い…すき……(遺言) (2018年12月13日 20時) (レス) id: 66413608c9 (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - ハニーさん» あ、なんかすみません・・・・・( ・−・) (2018年11月22日 23時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - 澁澤さんの童話むり…しんどい…(´Д` ) (2018年11月22日 10時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒月夜 | 作成日時:2018年5月10日 21時