春、僕らは恋をする。【オリジナルBL】 (ページ2)

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『来週から検査入院です。準備お願いします。』

簡潔にまとめられた文字を見る。僕は慣れた手つきでペンを持ち文字を書いたメモを見せる。

『分かりました。ありがとうございました。』

ｶﾞﾗｯ

扉を開けると風がフワッと吹き込んできた。

僕は小さい頃虐待を受けていた。その都度溜まっていく過度なストレスにより耳が聞こえなくなっていた。

『突発性難聴』

と言うらしい。

耳が聞こえなくなると誰かと話すことも次第に少なくなっていった。

気が付くと僕は喋れなくなっていた。

そして親はこんな僕を面倒だと思ったのか捨てた。今思うとあのまま暴力を振るわれるなら捨てられて良かったと思い始めている。

今は僕の担当医をしてくれている氷川海兎先生のところでお世話になっている。

その人は両親と違って暴力も振るわないし暴言も吐かない優しい人だった。

僕が初めて心を開いた人でもあった。

『A、来週から検査入院なんだって？』

『うん、そうだよ』

会話は全て筆談。僕と関わる人達全て筆談。

その為か近寄ってくる人は少ない。

こちらとしてもありがたい。

『頑張れよ』

『ありがとう、先帰ってるね』

『できるだけ早めに帰る』

『うん、じゃあね』

僕は海先生に手を振り病院を後にした。

少し前までは外に出る時ですら凄く心配されることもあった。

あれに関しては初めて屈辱を味わった時だったと思う。