29話 ページ30
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side誠凛ベンチ
「監督。橙山の…“縮地法”ってやつですか?」
「いや、たぶん違うわ。縮地法は体を傾けてるような動きがあったけど、今の動きにそんな予備動作がない」
秀徳がすぐさま点を返したがそれまでに行われた橙山の動きに思わず降旗は監督に聞かずにはいられなかった。高尾からキャプテンの大坪にパスが通されシュートを決められたが、まさに点と点を繋ぐかのように橙山は高尾の前から大坪の前へと移動してみせた。
「…前に海常の、加藤って子がいってた舞うようにってまさにこの事だな」
「でも、あんな動きして体力もつのかな?」
土田と小金井が心配そうにコートを見る。誠凛ベンチの心配とは他所に観客達は橙山のディフェンスにザワついている。そして、気になる点がもうひとつ。
「なんで、オフェンスとディフェンスで空気が違うのよ…」
ディフェンスは今までの彼、そのもの。声を出し、圧力をかけ足を動かし続けている。しかしオフェンスは
「……」
「っ!うお」
無言。なのに、ベストポジションでシュートを打てるフリーのところにパスを出している。黒子くんがミスディレクションでパスの起動を変えて意表をつくなら橙山くんは自分を注目させて空いたところに的確にパスを出しているようだ。
「おーい高尾、木村。マークチェンジ」
秀徳の監督が直接指示を飛ばした。直接的な形にしてきたことに疑問をもつ誠凛側。コートに近づいて立つ監督の傍に気づけば橙山がいた。
「監督。黒子はこのまま抑えられる。高尾は黒子を見失わない」
「えっ、それってどういう…橙山くん!」
「今、橙山…黒子って呼び捨て…?え?つまり…?」
「オフェンスの時だけ“御曹司モード”…入っちゃってる?」
橙山は言うだけ言うとまた瞬時にオフェンスへと移動した。それを見て福田、河原が顔を見合せた。
「二重人格…とかじゃない…よな?」
控えめに降旗が周りに聞くが誰一人としてその問いに答える者はいなかった。
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ZERO(プロフ) - 話めっちゃ面白いです!!質問なんですが、もう更新はしない予定ですか?? (2023年3月14日 22時) (レス) id: 9cf90e2809 (このIDを非表示/違反報告)
ze0(プロフ) - 成類さん» 返事遅くなりました!はい同い年です! (2022年4月23日 6時) (レス) id: 66aa2da0c7 (このIDを非表示/違反報告)
成類 - 一つ質問なのですが、手塚や幸村、跡部たちと同い年ですよね? (2021年8月28日 20時) (レス) id: 9f128687fb (このIDを非表示/違反報告)
ze0(プロフ) - プラタナスさん» コメントありがとうございます。そうなんです。テニス界は別次元すぎて...そこの境目が出過ぎないように楽しく書いていきたいと思います!面白いと言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます! (2021年7月20日 8時) (レス) id: ca079dae55 (このIDを非表示/違反報告)
プラタナス(プロフ) - テニス界にいたならスタミナ切れで負ける事無いですし、ジャンプ力もネットの上余裕で超えれるので普通に強いプレイヤーですよね(笑)夢主がバスケとテニヌでの常識が全然違って驚いてるのが凄い面白いです (2021年7月18日 9時) (レス) id: 74d3bdb7ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゅうぶら | 作成日時:2021年7月5日 16時