云われるまでもない ページ8
.
No Side
太宰は喫茶店の壁に寄り掛かって二人の話が終わるのを待っていた。
暫くすると、安吾が一人、店から出て来た。
「話は終わったのかい？」
「えぇ。貴重なお時間、ありがとうございました」
お辞儀をする安吾を横目に見て、太宰は店へと入ろうとする。
「太宰君」
そこで安吾が名前を呼び引き止める。
足を止めるも太宰は安吾に視線を向ける事は無かった。
「あの子は、異能が無ければ只の女の子です。本来ならば危険が無い様に、此方で保護する予定でした。しかし、あの子は探偵社を……貴方達を信頼している。漸く見付けた居場所を、僕はあの子から奪う事は出来ない。Aさんを、守ってあげて下さい」
再度深く頭を下げた安吾。
それを見て、少し驚いた表情をした太宰だが、すぐに表情を戻して口を開く。
「安吾、君に云われなければ分からない程、私は落ちぶれてはいないよ」
何時しか少女が見せた泣き顔が、太宰の頭に浮かんだ。
「――当たり前なのだよ、そんな事」
そう云って太宰は店の中へ消えて行った。
.
太宰Side
店に入りAちゃんが座る席へと近付けば、何やら黙々と食べていた。
『ん？ 太宰さん』
大きなパフェを前にして、私に気付いて顔を上げた。
本当に注文したのだね。
しかも、一番高いデザートを。
『いやぁ〜こういうの食べてみたかったんだねぇ。安吾さんも“好きなのどうぞ”って云ったから』
遠慮の「え」の字の欠片も感じさせない程に良い笑顔。
うん、嫌いじゃないよ。
向かいの席に座って、頬杖を着いてAちゃんを見る。
「安吾とどんな話をしたんだい？」
私がそう尋ねると、Aちゃんは食べる手を止めた。
『院長がさ、ウチの事で安吾さんトコに相談してたんだって』
「杉浦院長が？」
『うん。それで、今後どうするかーとか特務課で働かないかーとか話して……規則厳しそうで面倒だから断ったよ』
「ふふっ、Aちゃんらしいねぇ」
『それで……まぁ、探偵社で頑張るって云って、頑張ってねって感じに話は終わり』
ざっくり過ぎて詳しい所が曖昧なのだけれど。
「まぁ、何もなくて良かったよ」
そう云いながら、ひょいっとチョコを摘まんで口に入れた。
『あぁぁっ！ 今ここのチョコ食べた！ 取っといたのに！』
「好物は先に食べないと取られてしまうよ？」
『ウチは好きなのは最後に食べるのっ！！』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 886人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるか(プロフ) - すみません、リクエストお願いします。何でもいいのでネコ科の動物に乗って夢主が、爆走するのを書いてもらえればうれしいです。よろしくお願いします。 (2018年6月20日 0時) (
レス) id: 2bc02ca7fa (このIDを非表示/違反報告)
ココ(プロフ) - すみません、少し思いついたのでリクエストさせていただきます!夢主ちゃんと鏡花ちゃんが兎達とふれあってるほのぼのしたお話を書いていただきたいです!よければよろしくお願いします! (2018年6月17日 7時) (レス) id: 8afcf3da14 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - RANAさん» 創作出来ました。リクありがとうございます！ (2018年6月17日 0時) (レス) id: 1f1c692189 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - 最新話みました！！めちゃめちゃ面白くて大好きです！！ありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2018年6月16日 23時) (レス) id: 4350057b28 (このIDを非表示/違反報告)
愛子(プロフ) - 蛞蝓さんで吹き出しました(笑)面白いです。更新頑張って下さい！応援してます。 (2018年5月23日 10時) (レス) id: 1d139961bb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ネコぱふぇ
| 作成日時：2018年4月22日 23時
