【文スト】使えない駄犬は嫌いだよ (ページ44)

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「中也、こっちはもう人は居ない」

＜分かった。こっちも粗方誘導は完了した。あとは――＞

無線で話しながら歩いていると、不意に視界が歪んだ。

立ち止まって目を擦る。

目の前がぼやけてはっきりと見えない。

＜――ぉい、聞いてんのかぁ？っし、ま……ぉぃっ……――＞

無線からの中也の声が遠退いて行く。

それどころか周りの音も段々小さくなっていく。

酷い耳鳴りもする。

(嗚呼、これは……拙い)

そう思った瞬間、津島は血を吐き出した。

ボタボタと地面に落ちる赤い血。

口元についた血を拭って、顔を上げる。

日も暮れつつある街並みは夕日で血の様に赤く染まっていた。

何時もテラスから街並みを見下ろす風景と、また違った趣がある。

「悪くないか……」

――こんな終わりも。

そう呟き、耳からイヤホンを取って地面に落として踏み潰した。

津島はよろよろと歩いて暗い路地へと入って行った。

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太宰Side

敦君を無事回収し、探偵社へ戻ろうと敦君を支えながら二人で歩いていた。

「……？太宰さん、あれ」

「ん？」

何かに気付いた敦君が指を指した方へ視線を向けると、犬が一匹歩いていた。

それが普通の犬でない事は一目で分かった。

――Aの異能の黒犬だ。

ポートマフィアもこの騒動で駆り出されていた事は知っている。

この場にAが居ても不思議ではない。

しかし、黒犬の様子がどうもおかしい。

姿が保てないのか、体の大半がボロボロと崩れ始めていたのだ。

良く見れば、近くに他の黒犬が居て、それも姿が崩れて消えている所だった。

消える場合は影へ潜るか、異能力者本人の場所へと戻る筈。

――何か、引っ掛かる。

その黒犬たちは崩れる体のまま暗い路地へと進んでいる。

「……太宰さんっ！あそこっ！」

突然敦君が叫んだ。

黒犬たちが入って行く路地の奥。

暗くて最初は分からなかったが、黒い外套が蹲っているのが見えた。

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