【文スト】使えない駄犬は嫌いだよ (ページ38)

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ナオミは給湯室の上の棚を覗く。

「おかしいですわ。珈琲は確か此処に……あ、あんな奥に」

ナオミが手を伸ばしても届かない位置に珈琲の瓶があった。

台座を持ってこようかと思った所に、遅れて来た太宰が入って来た。

「私が取るよ」

太宰はナオミの後ろから手を伸ばし、難なく珈琲の瓶を手に取る。

「ありがとうございます、太宰さ――？」

瓶を受け取りながらお礼を云う際、太宰の指が首元に触れた。

そのままスッと顎に触れ、軽く上を向けられる。

すぐ後ろに立つ太宰が、上から見下ろす様に静かにナオミを見ていた。

「だ、太宰、さん……？」

「……」

ナオミが困惑しながら名前を呼ぶと、太宰はスッと目を細めた。

顎に触れる太宰の指が、ナオミの首に掛かった――。

「――ねぇ」

給湯室の入り口に乱歩が立って居た。

呼び掛けと共に、太宰がナオミから離れる。

「そう云えば駄菓子の貯蓄が切れてた」

「え、そうなのですか？」

「だからちょっと行って来る。行くよ荷物持ち(・・・・)」

クイクイと指で太宰を指名して乱歩が歩いて行ってしまった。

太宰は「じゃあね」とナオミに手を振ってその後に続いて出て行った。

駄菓子を買うならそう時間は掛からないだろう。

そう思って、ナオミは珈琲を入れる準備を始めた。

カップを出そうと棚を開いて、「あら？」と声を上げた。

開けた棚の中には、乱歩専用の駄菓子が入っていた。

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太宰がビルから出て道へ行くと、乱歩が静かに立って待っていた。

その姿を確認して、ふふっと太宰は笑った。

「乱歩さん、ケータイを預からせて貰ってもよろしいですか？」

太宰が云うと、乱歩は静かに携帯電話を取り出して太宰に手渡す。

「では、行きましょうか」

太宰は乱歩を連れて、路地裏へと消えた。

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