後悔の呟き ページ32
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「――亡くなったのは精神科病院を経営していた病院長の杉浦蓮司さん。火災発生から連絡が取れず行方不明になっていたそうです」
「Aちゃんが居たのは、孤児院ではなかったと云う事だねぇ」
買い物から帰って来た敦は、太宰達に話をした。
火災のニュースについて調べてみると、色々と情報が出て来た。
「確かなのか?」
「院長の写真を見て、間違いなく院長だとAが云っていたので」
「それで……Aちゃんは?」
太宰の問い掛けに、敦は一度俯いて心配そうにドアの方を見て云った。
「……今は屋上に居ます」
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『……』
買い物から帰って来て、新聞紙の山から新しい物を引っ張り出して来た。
新聞自体を余り良く読んだ事は無いけど、火事の記事を探したらすぐに見付かった。
焦げた建物の外観は、確かにウチが1ヶ月前に居た所だ。
院長の名前にも憶えがある。
孤児院とは云っても病院も兼ねているとは知っていた。
けど、まさか精神科病院とは……。
今まで生きて来て初めて知った事実だ。
『……あぁ〜もう、ワケ分からん』
ぐでぇっとその場に寝転がる。
《A、如何したよ?》
今日遊びに来ていた野良猫がすりっとウチの顔に擦り寄って来た。
『……院長、死んじゃったって……』
晴れた青空を見上げながら呟いた。
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――A! また猫を連れ込んだなぁっ!
――勝手に付いて来ちゃうんだよ! しょうがないじゃん!
――うっ! コラッ……そんな近付けっ……へ、へっ! へっくしっ!
――うわっ! 汚いよ院長。というか、大丈夫?
――心配するなら猫を追い出せ! 手を洗って来いっ! へ、へっくしょいっ!
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そんなやり取りが毎日の様に続いた事があったっけ。
今考えると懐かしいなぁ。
院長、アレルギーなのに悪い事したなぁ……。
《……A?》
『……ちゃんと、謝れば良かった』
そんな事を考えていたら、鼻の奥がツーンとした。
顔を覗き込む猫が心配そうに名前を呼ぶ。
ウチは袖でぐいっと目元を拭って、起き上がる。
『ちゃんと、みんなに話さないと』
ウチは立ち上がって、屋上を後にした。
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夜廻(プロフ) - 続編待ってました!無理しないで、頑張って下さい!!!! (2018年3月25日 18時) (レス) id: 44c5ec9c50 (このIDを非表示/違反報告)
ノア@情緒不安定(プロフ) - ちぃちゃんの性格が好き。 (2018年3月17日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
高杉アヤ(プロフ) - 何この作者神かよ女神かよ!!(←羨まし過ぎて逆に尊敬してる奴) (2018年2月19日 21時) (レス) id: bdc5f38589 (このIDを非表示/違反報告)
sakaruma1031(プロフ) - とても、面白いです。続きが気になります! (2018年2月18日 11時) (レス) id: 7de756cf73 (このIDを非表示/違反報告)
ヨッシー(プロフ) - やつがれえええええ!良くやった!ひぐっちゃんおめでとう! (2018年2月7日 19時) (レス) id: 71a49373db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネコぱふぇ | 作成日時:2018年1月19日 23時