その視線は ページ34
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控え室に到着すると、他の通過者たちが待機していた。
『もう通過した人こんなに居るんだ』
「通過者はあちらでターゲットを外して、ボールバッグの返却をして下さい」
『あ、はい』
案内人に言われて奥の方でターゲットを外した。
他のA組生徒が居ないか、控え室を見渡す。
『他のみんなは……まだ来てないのかぁ……』
悲しいかな、知っている人が一人も居ない。
何とも居た堪れない空間。
その時、部屋の端の椅子に、見覚えのある紅白頭が見えた。
『あっ居たっ！ 轟く――』
「お疲れ様ですっ！！ 雄英の人っ！！」
『うわぁぁぁっ！？』
突然大声が振り掛かり驚いて体が飛び上がった。
慌てて振り返ると、コスチューム姿の夜嵐イナサが立って居た。
『あ、士傑の、夜嵐イナサ、くん？』
「おおっ！！ 自分の名前知ってるッスかっ！？ 光栄ッス！！」
(相澤先生にマークして置けって言われたし……印象強いからなぁこの人)
何せ試験前の印象が強過ぎて覚えてしまった。
それに、雄英の推薦入試で成績トップを取った人だ。
結局、試験では会わなかったけど、通過したなら強いのは確かな筈。
「確か君、雄英体育祭で3位の燈堂さんッスよねっ！ トーナメント戦、熱い戦いだったッス！」
『あ、ありがとうございます』
「ところで！ 好きなヒーローは誰ッスか？ 折角なんで熱く語りましょう！」
(ひぇ〜どうしよう……)
夜嵐に絡まれてたじたじのA。
チラッと轟の方へ視線を向けて助けを求める、が……。
(呑気にお茶飲んでるっ！)
轟は、我関せずと言った風に、一人ぼーっと寛いでいた。
もう少し周りに関心持とうよ。
その時、冷たい空気を感じて視線を戻した。
夜嵐が、Aと同じく轟を見ていた。
その視線はとても冷たく鋭いものだった。
さっきまで陽気に話していた時とは、明らかに雰囲気が変わっていた。
「……で！ 好きなヒーローは誰ッスかっ！？」
Aの視線に気付いて、また表情を変えて再度尋ねて来た。
その変わり様に驚きつつ、Aはゆっくり口を開いた。
『夜嵐君……轟君の事、嫌いなの？』
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作者名：ネコぱふぇ
| 作成日時：2020年6月28日 11時
