人生万事塞翁が虎 ３ ページ5
食事処に到着して、お茶漬けを注文し、敦さんにご馳走する。
隣で食べる様子を見ていた私は、良い食べっぷりと感嘆する。
同時に、全く遠慮が無いなと思った。
次第に丼の塔が積み重なって行く。
私たちの向かい側に座る国木田さんは、太宰さんの入水の所為で予定が狂ったと怒っていた。
「はぁ〜食ったぁ〜。もう茶漬けは10年も見たくない」
膨らんだお腹を摩りながら、食後の余韻に浸る敦さん。
向かいの席で国木田さんがムカついているのは、見なかったことにしよう。
積まれている丼の数も、見なかったことにしよう。
「助かりました……孤児院を出て横浜に来てから、食べる物も寝る所も無く、沫や餓死するかと……」
「君、施設の出かい？」
「出と云うか……追い出されたんです」
『追い出された？』
それは何と酷い所だろうか。
同乗する太宰さんだったが、隣に座る国木田さんに云われ、仕事の話へと戻った。
仕事と云うのは探偵。
と云ってもただの探偵ではない。
武装探偵社――軍や警察に頼れない危険な仕事を専門にする探偵集団。
それを知って、敦さんは大変驚いていた。
しかし、太宰さんが鴨居を見て喜んで、首吊りの算段をするなと国木田さんに云われ、太宰さんが「首吊り健康法」なる危なっかしい事を云い、それを真に受けメモを取り始める国木田さん。
揶揄った太宰さんが嘘と云えば、今までのイライラが積もっていた国木田さんが太宰さんの首を絞め激怒する。
『あ〜また始まっちゃった』
「……本当に、この二人があの武装探偵社なんですか？」
『そうなんですけど……まぁこの人たちはいつもの事なので、あまり気にしないでください』
「あの、美月……さんも、探偵社の方なんですか？」
『はい、主に書類整理などをしています。前線に出るのは、主に太宰さんたちなんです。今日もお二人は仕事をしていたのですが……』
そういえば今回、国木田さんたちが担当していた仕事って、件の「虎探し」だったか。
近隣を荒らし回っている噂の「人喰い虎」――事実、人を喰ったかどうかは分からないが、倉庫や畑を荒らしているようだ。
そんな話をしていると、突然椅子から転げ落ちた敦さん。
私は驚いて、隣の敦さんを見下ろす。
顔色が悪い。
焦り床を這って帰ろうとしていたところを、国木田さんが、襟首を掴んで持ち上げる。
「無理だ！ 奴に人が敵う訳無い！」
敦さんの様子からして、例の「人喰い虎」を知っているようだ。
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ネコぱふぇ(プロフ) - ステラさん» コメントありがとうございます。続編・番外編もよろしくお願いします。 (2018年10月9日 23時) (
レス) id: c2e869a79d (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - すごく面白かったです。(≧∇≦) (2018年10月9日 17時) (レス) id: 62ccad48f7 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - 美花さん» コメントありがとうございます。喜んで頂けて嬉しいです！ (2018年10月7日 10時) (レス) id: c2e869a79d (このIDを非表示/違反報告)
美花 - 面白かったです。サイコー!(〃^ー^〃)コメントがないのが不思議な位です…。 (2018年10月7日 9時) (レス) id: f78291fe45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ネコぱふぇ
| 作成日時：2017年10月21日 23時
