何者 ページ35
「易々と敵の手中に落ちるなど、武装探偵社が聞いて呆れるな」
『……芥川、さん』
ポートマフィアに捕まった――最悪の状況だ。
芥川は牢屋に入ると、目の前まで来て私を見下ろした。
『……何故、私を？ 尋問のつもりなら、何も話しまっ――！！』
突然、羅生門の影が首の横を掠り、壁に突き刺さった。
切れた傷から血が流れた。
「黙れ。余計な事を云うな」
ずずっと影を仕舞いながら芥川が云う。
なんて身勝手な、とは思うものの、私は黙って従うしかない。
「貴様は、何故太宰さんと居る？」
『何故って……』
唐突な質問だった。
意図が分からず、如何答えれば良いかすぐには浮かばなかった。
「貴様の様な小娘を、太宰さんが連れて行く理由が理解出来ない。異能力を買って傍に置いているとは、如何も考え難い」
『……私の異能力を買ってかは知りませんが、太宰さんに付いて行ったのは私の意思です』
「それをあの人が許可したと云うのか……貴様は、あの人の何だ」
『太宰さんの……』
言われて私はふと思った。
――自分は太宰の何なのか？
今までそんな事を尋ねられた事がない。
それどころか、そんな事を考えた事もなかった。
先程、私は「太宰さんに付いて行った」と答えたが、正確には「太宰さんに誘われた」から「付いて行った」のだ。
――何故あの時、太宰さんは自分を誘ったのか。
――自分は太宰さんにとって何者なのか。
考え込んでいると、いきなり右頬を叩かれた。
「答えろ、小娘」
俯いたままの私の胸倉を芥川さんが掴んだ。
真っ直ぐ此方を睨みつけるが、私はぼんやりと芥川さんを見ていた。
『……分かりません』
「……」
『貴方が納得する答えを、私は持ち合わせていません』
そう答えると、芥川さんは胸倉を掴んでいた手を放して背中を向けた。
「時間の無駄だったな」
そう吐き捨てる様に呟いて牢屋を出て行った。
残された私は遠ざかる足音を聞きながら、黙って天井を仰いだ。
今更ながら、どっと疲労が押し寄せた。
勝手に連れて来ておいて、良く分からない質問をされて、挙句「時間の無駄」と来た。
一体自分に如何しろと。
考えていると、頭が鈍く痛んだ。
身体が怠くなったので、壁に寄り掛かって、目を瞑った。
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ネコぱふぇ(プロフ) - ステラさん» コメントありがとうございます。続編・番外編もよろしくお願いします。 (2018年10月9日 23時) (
レス) id: c2e869a79d (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - すごく面白かったです。(≧∇≦) (2018年10月9日 17時) (レス) id: 62ccad48f7 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - 美花さん» コメントありがとうございます。喜んで頂けて嬉しいです！ (2018年10月7日 10時) (レス) id: c2e869a79d (このIDを非表示/違反報告)
美花 - 面白かったです。サイコー!(〃^ー^〃)コメントがないのが不思議な位です…。 (2018年10月7日 9時) (レス) id: f78291fe45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ネコぱふぇ
| 作成日時：2017年10月21日 23時
