One ball concentric.

#まだ見ぬ世界 ページ38

・



球場に入るや否や、凄いことなってますよ！！と猛スピードで駆け寄ってきた広報さんの見せてきたタブレットの画面にはオールスターのファン投票の結果だった。



「……えっ？」


梅野「アリスぶっちぎり1位じゃん」


「これ何かの間違えちゃいます？」







困惑の表情を浮かべる私を他所に盛り上がってる広報さんはこれを機にSNSの方の投稿増やしてくので！と来た時と同じように騒がしく去っていった。




梅野「オールスター逃げちゃダメだよ」


「…」


梅野「こら、黙るな」


「素直に楽しめる器量無いから出たくないんですよ」


これまでも有難いことに何度も選出しては貰ってきたが、
毎年のように批判の声も上がるし、辞退をしたことだってある。
ああいう風にファンサービスが求められる場は向いてない。



梅野「アリス


別に楽しめばいいんだよ、どんな時でも」












梅さんのいつもと変わらない優しい声色とは反して真剣な目にドキリとした。皮肉めいたことを口にした少し偽った自分への本心をつかれたからかもしれない。



「梅さんってたまに核心突きますよねぇ」


梅野「アリスとはもう長い付き合いだからかな」


「…ちょっとだけ思ってますよ、今の私は

楽しんでも良いのかな、なんて」


梅野「なら、楽しんだらいいんじゃない？

少なくともアリスが楽しんでる姿を見るのは好きだし、
同じように思ってる人はきっとたくさんいる


だから応援してくれる人がいるんだよ」










"俺はAのことちゃんと見てる"










「…まぁ、その気持ちは裏切れる訳ないか」


梅野「それ、誰のこと考えて言ってる？」


「さぁ？

でも、梅さんなら分かる思いますけど」







・

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す