One ball concentric.

#矜恃 ページ36

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森「アリスちゃーん」


「……」


森「え、無視は酷ない？」


「……何でここに居てんの」


森「偉大な先輩にご挨拶しに来ただけやん」


「そう思てるならちゃん付けで呼ばへんはずやけどなぁ」


森「痛っ！！」



差し出された手を思い切り握り返したらわざとらしい程の大きいリアクションを取った。おかげでベンチに居るオリックスの面々が何事かとこちらを見てる。西武の時は見知った光景やったからか誰も気に止めてなかったけど。




森「アリスちゃんと試合すんのは移籍してからは初やし、めっちゃ楽しみにしてた」


「それは奇遇やなぁ、私もやったわ」


元は同じチームで戦っていた訳であって。周知の事実かもしれないが信じ難い程に生意気でとにかくヤンチャ小僧。
初対面の高校時代には「森友哉っす、アリスちゃんって呼んでいいですか!?」って訳分からん言葉と共に今も関係性が続く付き合いの長い後輩になった。


お世辞にも可愛げがある後輩とは言えないが、
それなりに頼りにはなるし、信頼性はある、はず。







森「あ、世界一おめでとう」


「今言われても
シーズン中やし、ちょっともう消化し終えてるんやけど」


森「直接言いたかったからそこは上手く流してや

それに、やっぱりアリスちゃんには勝ちが似合うで」


「それ、大真面目に言うてるやつ？」


森「……さぁ？」



何処か煽ってくるような表情に思わずため息が出た。
この男もまた、私をよく知ってる。
明確に言わない癖してこちらが嫌という程に自覚が出来る。






"全部勝つんやろ"
"アリスちゃんは負けたアカンよ"












「私が負ける訳ないやろ」


森「それでこそ俺の先輩、アリスちゃんやなぁ」


「あんたも負けんな」


森「はは、暴君過ぎるって」



パチンと乾いたハイタッチ音が甲子園に響いた。
あの日と変わらず、それぞれ違うユニホームを背にして。








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