One ball concentric.

#らしくない話 ページ16

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1次ラウンドはあっという間に過ぎ去り、
チェコ戦もオーストラリア戦も日本らしい野球を貫き快勝。僅かな休養を挟み、明日からはひとつでも負ければそこで終わりの戦いが始まる。

まずは目の前のイタリアとの戦いを制してアメリカへ行く。



振り返る余裕なんてないはずなのに代表に呼ばれることが決まったあの日が既に遠い記憶へと変わりつつある。それだけ、長い時間が過ぎたように思える程の内容の濃い日々。



「…誰？」


ホテルの自室で物思いにふけていた所、急な着信音によって我に返った。掛けてきたのが誰かも確かめない内に電話に出ればそれは騒がしい奴で。



『もしもーし！！生きてる！？』


「…開口一発目からうるさいってどういう事なん」


掛けてきたのはアメリカに居るはずの鈴木誠也。
今回、代表入りを予定されていたが怪我の影響もあり断念。



「てかそっち夜中やろ」



鈴木『まー、0時ぴったりやな』



「いや、まじで何しに電話掛けてきてんの？？」


この勢いと破天荒な感じに前回大会では散々に振り回された。同級生だし、リーグも同じ、顔を合わせることは必然的に多いからそれなりに親しい間柄ではあるが偶に理解出来ない所もある。



鈴木『いや、アリスが死球食らって翌日スタメン落ちしてたの一瞬心配してたけど、後半出てきてタイムリー打つしオーストラリア戦はホームラン打ってキモイなぁって思ったからさ』



「心配どころか後半貶してるやろあんた」



鈴木『一応心配してる！！』



「一応とか言うからやろ」



用が無いなら切るでと言えば、
こっから本題と割と真面目なトーンで話を切り出してきた。



鈴木『村上が気になっただけ』



「…なるほどね」



その言葉だけで誠也の言いたい事は理解は出来た。
あまりいい結果を出せていない部分もあるし、期待されているから焦る気持ちだってある。そういう時こそ、普段気にしていないことまで目に入ってしんどくなってしまう。


鈴木『大丈夫だろうけど俺も分かるから何かなぁって思って
その辺のフォローは常日頃から尋常じゃないプレッシャーと批判と戦ってるプロフェッショナルなアリスに任せるべくと思いましてねぇ』



「言い分は理解出来るけど、物言いがまじ腹立つなぁ」


おちょくってる様に聞こえるが、私へのエールでもあるんだろう。
ものすごく不服ではあるが。



「…優勝報告、楽しみに待っとき」



鈴木『おー、頼むでアリス』






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