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「っ、……」
痛みますよね、と申し訳なさそうに処置をするトレーナーさんに答えられるほどの余裕すらも無いほどじわりじわりと広がる痛みに耐えるのが精一杯だった。
脳裏にはスローモーションのようにさっきの出来事が鮮明に思い出される。あれは初めからそうやって投げられたように思えた。
「…ふざけんなよ」
思わず漏れた本音にトレーナーさんは気を遣うようにして素早く処置を終わらせて私を部屋にひとりにしてくれた。ふつふつと腹の底から沸いてくる怒りと未だ消えぬ痛みにもう感情はぐちゃぐちゃに乱されてる。
「…こっちだって死ぬ気でグラウンド立ってんだよ」
一度頭に血が登れば冷静になんて不可能で。
ずっと蓋をしてきた色んな感情が波を打って押し寄せてくる。
"Aさん"
声が聞こえて直ぐに頭にタオルが掛けられた。
「…ごめん、今冷静で居られないから
由伸も出てってくれる?」
山本「…俺じゃ役不足ですか
俺だってAさんの支えになりますよ」
「そんな気遣い私に必要ないから」
突き放すように強い言葉で一線を引いた。
もうこれ以上、マイナスなことを考えたくない。
山本「Aさんまじ何なの?
そうやってあと一歩を詰めさせてくれないじゃん、
絶対辛いとか言わないしそんな姿も見せない
でもそんなのホントの強さじゃないでしょ」
核心をつかれてヒヤリとした。
そんなのとっくに分かってんだよ。
山本「あー、もう!!」
黙り込んだままうつむいてる私に痺れを切らした由伸は思いっきり引っ張って力強く抱き締めてきた。
山本「まじで俺ガンガンいくから!!
Aさんがウザがっても関係ないし、
パーソナルスペースとか言われてもぶっ壊すから!!」
"俺はAと野球したいだけ"
"俺はAのこと信頼してる"
ずっと前に、同じようにして私の中に居座って離れようとしなかった物好きがいたっけ。あの時もこんな風に距離を詰めてきてはそのまま私を離さなかった。
「…あー、もうまじでムリ
こんな強引なやつこれ以上出会いたくない」
山本「俺はAさんのことちゃんと見てるから
だから俺のことも頼ってよ」
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まめだいふく(プロフ) - ココさん» コメントありがとうございます。今後のお話の中で書いていこうと考えていましたのでお時間掛かるかもしれませんが気長にお待ち頂けたらと思ってます。 (12月8日 23時) (レス) id: da2dc5ac0c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふく(プロフ) - 大阪谷さん» コメントありがとうございます。今後ともお楽しみ頂けましたら何よりです。 (12月8日 23時) (レス) id: da2dc5ac0c (このIDを非表示/違反報告)
ココ(プロフ) - とっても面白くて2周してしまいました🥹🥰もし可能でしたら藤浪選手とのお話もいつか見てみたいです! (12月1日 8時) (レス) @page30 id: ffcb459d95 (このIDを非表示/違反報告)
大阪谷 - えぐいおもろいです! (11月26日 19時) (レス) @page26 id: 382b1b8271 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふく(プロフ) - もちひじさん» コメントありがとうございます。引き続き楽しんで頂けたら幸いです。 (11月20日 17時) (レス) id: da2dc5ac0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめだいふく | 作成日時:2023年11月14日 13時