浮気13 ページ14
〜貴方side〜
ソファーに座る赤葦に跨り、首元に顔を埋めながら抱きしめる。
止めようとしても止まらない涙。
優しい鉄朗の声が頭の中をリピートする。
「Aさん、落ち着きました？」
「････まだ」
「こんな所、黒尾さんに見られたら終わりですよ」
溜息を着く赤葦だが、そんなこと関係ない。
助けてくれたのなら、最後まで手を差し伸べるのが男ってもんだ。
赤葦の肩で涙を拭きながら、ぐりぐりと頭を押し付ける。
すると、
((ﾋﾟｰﾝﾎﾟｰﾝ
インターフォンが部屋中に響き、その音に驚き体が硬直する。
それに気づいたのか、赤葦は俺の背中を擦りながら「大丈夫ですよ」と言って立ち上がった。
まさかの、俺を抱えた状態で。
細身に見えて案外筋肉あるんだな、コイツ。
やりよる。
なかなか、やりよるぞ！
ガチャと鍵が開く音と同時に、勢いよく扉が開く。
「A！！」
後ろから息を切らした鉄朗が俺の名前を呼ぶ。
どうして息を切らしてるんだ。
此処まで走ってきたのか？
あ、そうか。赤葦の部屋があるのは6階。
わざわざ階段で上がってきたのか。
そんなことを考えながらも、俺は赤葦を抱きしめる腕に力を込める。
さっき電話で話をして、会いたいと言ったものの、どんな顔をすれば良いのか正直分からない。
「Aさん、苦しいです････」
「やだ」
「ヤダじゃありませんよ。 お迎え来ましたよ？ というか、すっごい顔で俺のこと見てるんで、本気で離れて下さい」
顔を上げ、赤葦を見上げてみると目が死んでいる。
そんな怖い顔してんの？
小さく息を吐き、ゆっくりと後ろを振り返ってみる。
「A････？」
そこには不安や心配、様々な感情に目を潤ませる鉄朗の姿があった。
「････」
「帰ろう。 ちゃんと全部話すから。 なぁ？」
声が少し震えているのが分かる。
赤葦の首に回していた腕を解き、そのまま流れるように鉄朗に飛びつく。
逞しい体が難なく俺の体を受け止め、そして、遠慮気味に背中に手が回される。
「帰ろう、A」
「････ん」
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