十話 ページ10
＿＿随分と騒がしい。
ビスケット島に上陸してすぐに感じたのは、まだ遠いはずの街の騒々しさだった。何かあったのだろうか。
「おい」
「は、はい！なんでしょう、カタクリ様！」
「街で何かあったのか？」
「街、ですか？特に何も連絡はきておりませんが…」
「＿＿おお、間に合ったなぁ」
エヴァンがゆっくりと、足音を鳴らしながら船を降りる。そのセリフに思わず眉をしかめた。
「なんのことだ」
「まぁまぁ、落ち着けよカタクリ。そう殺気だつな。行けばわかるさ」
いちいち癇に触る男だ。やはり何か企んでいるらしい。
「街へ行こう。きっとお前もわかるはずだよ」
胸騒ぎではないが、何か、嫌な感覚が胸の中で蠢いていた。
「カタクリ様！？」
「え！？何故カタクリ様がビスケット島に！？」
「隣の男、いったい誰だ…？」
住人達はコムギ島にいるはずの俺に驚いてはいたが、普段と様子が違いすぎる事はなかった。その様子が逆に俺の不安感を煽る。何もないわけがない。
「さすがカタクリ。人気者だなぁ」
「おい、少しいいか」
「えっ、はい！何かご用でしょうか！」
「俺のことは無視するんだなぁ」
ひどいなぁ、寂しいなぁ、と背後からめそめそ聞こえるが正直鬱陶しいだけなのでどうでもいい。(おまけに本人は笑っているだけだ。泣いてない)
「街で何かあったか？」
「ああ、北の方で海賊が出たみたいで。クラッカー様は今海に出ていらっしゃるけど、チェス戎兵がなんとかしてくれてて…」
「海賊だと？」
…おかしい。ナワバリウミウシ達がいるはずだ。もし海賊が来たのなら必ず連絡が入る。それにここはママの縄張り、迂闊に海賊は立ち入らない。不自然だ。…クラッカーがいないということもふまえると、内部の情報が漏れていた？
そこまで考えて、ふと思い至る。エヴァンが手引きしたのではないかと。しかしあの優男がクラッカーの予定を知る方法はないだろう。海賊を手引きする理由も見つからない。…考えすぎか。
「俺がなんとかしよう」
それだけ言うと、言動だけは俺を責め立てる男を置いて北へ向かう。慌ててついてきたが気に留めず歩いた。
「カタクリ、俺を置いていくなんてひどいじゃあないか」
「うるさい。黙ってついてこい」
「はっはっは、わかったわかった。だが、海賊のことなら大丈夫だ。街は無事だよ」
「何故そう言いきれる」
男はまた口角をあげて、そしてまた同じ事を言った。
「行けばわかるさ」
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黒川(プロフ) - トマトさん» ありがとうございます！ (2020年1月27日 17時) (
レス) id: 71b39bcae7 (このIDを非表示/違反報告)
トマト - (ruby:漢字:読み)でルビ振れますよ (2019年9月11日 21時) (レス) id: 163a5abe9a (このIDを非表示/違反報告)
黒川(プロフ) - はいるさん» ありがとうございます！最近私生活が忙しく更新が滞ってしまっているのですが、気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2019年7月24日 18時) (レス) id: 71b39bcae7 (このIDを非表示/違反報告)
はいる(プロフ) - 続きが読めるのを楽しみにしています！ (2019年7月23日 9時) (レス) id: bf6bddb7dc (このIDを非表示/違反報告)
黒川(プロフ) - ゆめさん» ありがとうございます！そのお言葉が嬉しいです(^^)もっとのびるよう精進したいと思います！ (2019年6月2日 13時) (レス) id: 71b39bcae7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒川 | 作成日時：2019年5月26日 17時
