十七話 2/10修正 ページ17
「……カタクリくん？」
「目が覚めたか」
窓からさしこむ光が眩しかった。寝起きの頭では何故カタクリくんがここにいるのかわからなくて、というかどうして寝ていたのかもわからなくて、状況を把握しようと視線を彷徨わせた。どことなく見覚えのある部屋だなぁと思っていると、彼が口を開く。
「体調はどうだ？」
「平気よ。それよりもここはどこ？」
「ホールケーキ城だ。お前が意識を失って……四時間、といったところか」
…ああ、そういえば、倒れたのか。言われてみれば、この部屋は私が来た時に使っていた城内の部屋のようだった。
「ずいぶん寝てしまったわね。迷惑をかけたわ」
「いや、いい。むしろ謝罪するべきはこちらだろう」
「どういうこと？」
「さっき連絡があった。食事に毒が盛られていたそうだ」
「ああ…やっぱり。美味しかったのに」
どうやら私の予想通りのようだった。
「わかっていたなら何故食べた？」
「いいえ、症状が出てから気づいたのよ。今思えば、味が強かったのも、気づかせない為だったのかもしれないわね」
なんて、後の祭りだが。
「それよりもギルはどこに？」
「誰の事だ」
「私の後ろについてまわっていた男」
「あの男ならエヴァンの所に行くと言っていたが」
彼が些か緩慢な動きでサイドテーブルに置かれていた林檎の皿を私に差し出すので、一つ受け取ってゆっくり咀嚼する。心配してくれたのだろうか。一度胃にいれると、どうやら自分が空腹であることを自覚させられた。四時間も経っているのだからお腹が空くのも当たり前だろう。
それからお互い何も喋らないので、私はただ差し出されるままに果実を咀嚼し続けた。まるで餌付けされているようで、なんだか幼子のような扱いだと思うと胸のあたりがむず痒くなった。私達の時間はやはり止まっていた。
＿＿そして突然、背筋に悪寒が走る。大気が震え始めたのだ。緊張で口の中に広がる林檎の甘さがとんでいった。少しでも気を緩めれば泣き出してしまいそうな不気味な気配が感ぜられた。
「なに」
すっかり気を緩めていたから声がひきつってしまった。彼は少し目を細めてこう言った。
「ママだ」
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
買えずにいた巻を買えたのですが、これなかなかこの小説の設定を歪めていかないといけなさそうで涙しています。個人的にイゾウさんめちゃくちゃでてきて嬉しいし書きたくなりますね。
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黒川(プロフ) - トマトさん» ありがとうございます！ (2020年1月27日 17時) (
レス) id: 71b39bcae7 (このIDを非表示/違反報告)
トマト - (ruby:漢字:読み)でルビ振れますよ (2019年9月11日 21時) (レス) id: 163a5abe9a (このIDを非表示/違反報告)
黒川(プロフ) - はいるさん» ありがとうございます！最近私生活が忙しく更新が滞ってしまっているのですが、気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2019年7月24日 18時) (レス) id: 71b39bcae7 (このIDを非表示/違反報告)
はいる(プロフ) - 続きが読めるのを楽しみにしています！ (2019年7月23日 9時) (レス) id: bf6bddb7dc (このIDを非表示/違反報告)
黒川(プロフ) - ゆめさん» ありがとうございます！そのお言葉が嬉しいです(^^)もっとのびるよう精進したいと思います！ (2019年6月2日 13時) (レス) id: 71b39bcae7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒川 | 作成日時：2019年5月26日 17時
