番外編 研究データ6 ページ30
「怠惰にはとんでもなく甘い顔をするもんだな」
塔間は懐から折り畳み式のナイフを取り出し、熱い吐息を吐く彼女の唇に当てがう。ナイフを外しその唇に指先で優しく触れた後、ビッと上気した頰をナイフで傷つけた。
血が溢れ一瞬痛みの表情を見せた顔も、すぐにまた苦しそうなる。
「こういう調教の仕方もあるか…」
塔間がそう呟いた瞬間、部屋の扉が大きく音を立てて壊された。目を見開きその方を見ると、怠惰の真祖が息を荒げて立っている。
「Aを…どこにやりやがった…!!」
怒りを含んだ声にニヤリと笑うと、塔間の近くに彼女がいることに気づいたクロは走って近づく。
「A…?」
クロは彼女の姿を見た瞬間、一瞬だけ安堵の表情を浮かべた後、苦しむその姿に顔を青くさせた。
瞬間、側に立っていた塔間を蹴り飛ばし壁にめり込ませる。
「Aっ…」
クロは彼女に繋がれたコードを乱暴に引き離し、外した冠を床に叩きつけ、手足を固定していた器具を壊し、目の周りを覆う機械を外すと手で握りつぶした。
解放され、倒れ込んでくる彼女を抱きしめる。息を荒げたままの彼女を心配して顔を覗き込むと少し目を開いた。
「クロ…?」
「オレだ…A…」
「クロ…あのね、私…頑張ったよ。研究のために…はあっ……いっぱい戦ったの。これで…一人前、だって……認めて、くれる?」
苦しそうに息を詰まらせながらそう伝えてくる。クロは怒りと悔しさに拳を震わせながらも、彼女の体を力強く抱きしめた。
「もう大丈夫だからなっ…!オレが来たからもう大丈夫だっ…!」
彼女はクロの言葉に笑みを浮かべ、眠りにつく。クロは彼女が眠ったことを確認すると、そっと体を抱き上げ塔間の方を睨んだ。
「このまま殺してやってもいいんだぞ…」
「はっ。俺を殺せばお前ら吸血鬼はC3とは本格的に対立関係になるぞ?」
「立場的にはみんなを思うとお前を殺すことはできない……でも、感情的にはお前を殺したくて仕方ないんだっ…!」
クロの殺意に流石の塔間も背筋が凍る。
最強の真祖の怒りに触れ、恐怖を抱きながらも余裕の表情を見せた。
クロはその表情に腹が立ち、殺そうとジャケットの裾に力を込めるが、眠っているはずの彼女が弱い力で彼の服を引っ張る。
それはまるで"やめて"と言っているようだった。
クロは怒りを抑え彼女の肩を抱き寄せると、壊れた扉から出て行った。
22人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星歌(プロフ) - カコさん» 私も最近嫌いになれない人だなと思うようにはなりました…。この小説だと完全悪者扱いですよね…すみません…!! (2018年2月24日 21時) (レス) id: a4174cb21e (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 塔間さん嫌いにはなれないです…。 (2018年2月24日 16時) (レス) id: 667d573e94 (このIDを非表示/違反報告)
星歌(プロフ) - 唄さん» 大いに同感であります唄様…!!全てにおいて美しいですもんね、めんどくせーから家デートでとか言われても全然オッケーですもんね。むしろありがたき幸せ。クロ大好きです!! (2018年2月22日 21時) (レス) id: a4174cb21e (このIDを非表示/違反報告)
唄(プロフ) - 切実にあんな彼氏が欲しくなる、と言うかクロと言う名の彼氏が欲しくなりますね。 (2018年2月21日 21時) (レス) id: 4acb668125 (このIDを非表示/違反報告)
星歌(プロフ) - お菓子の家さん» コメントありがとうございます!わあ〜!!なんとありがたきお言葉!!そう言っていただけると、もっと頑張ろうと思えます(*´∇`*) 頑張らせていただきます! (2018年2月20日 21時) (レス) id: a4174cb21e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:星歌 | 作成日時:2018年2月6日 20時