番外編 研究データ4 ページ28
「そういうことするとみくみくが怒るんだけど〜?」
ヨハネスが椅子に寄りかかりながら言うが、塔間は何食わぬ顔でタバコを取り出した。
「俺は御国の元上司だ。これくらい構わんだろう」
「へー。ラーヴァンプ、本当に怠惰には牙を向けないからデータ取れないんだよね」
「俺が観たいのはデータじゃないんだよ。Aの恐怖に怯えた顔はなかなかそそるからな」
「うわー…おっさんまさかのロリコンなの?」
「俺は"イヌ"が好きなんだ。忠実なイヌも好きだが、怯えた子犬のようなイヌもいい」
「へー。でも、ラーヴァンプは犬って言うより猫だけど。時には主人にも牙を剥く猫、ね」
ーーザシュッ
塔間はバーチャルの中の彼女に目を見開く。さっきまで怯えた表情を見せていたはずの彼女は、自身を押さえつけていた主人を鋭く睨み、その頰を鉤爪で引っ掻いた。
「貴方はクロじゃない…クロの真似するなんて許せない!」
彼女はクロの腹を蹴り上げ体勢を立て直すと攻撃に入る。
「ほう…本物と偽物の区別くらいつくようになったか。なら、これはどうだ?」
彼女がクロに鉤爪を向けたその時、ふっとクロは笑顔を浮かべた。
「なっ…!?」
優しいいつものクロの微笑みに、流石に彼女は戦意を失う。今までのバーチャル吸血鬼たちは無表情だったのに、今目の前にいるクロはまるで本物のように表情を変えた。
「A…」
名前を呼ばれ、緊張していた体が安心したように軽くなる。愛しい人の声に心が安らいだ。
抱きしめようと腕を広げてくるクロに抵抗を見せたが、振り払えずそのまま抱きしめられた。
「クロっ…」
鉤爪を手に戻し、完全に戦闘モードを解いてその体に擦り寄る。少し低めの体温も低く気怠げな声も、何もかも愛しい恋人そのものだった。
「クロあのね、私頑張ったよ。研究のためにいっぱい戦ったの。これで一人前だって認めてくれる?」
嬉しそうにそう話す彼女に塔間も笑みを浮かべた。
「じゃあご褒美でもくれてやるか」
塔間は不気味な笑みを浮かべ、危険そうなボタンを押した。
22人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星歌(プロフ) - カコさん» 私も最近嫌いになれない人だなと思うようにはなりました…。この小説だと完全悪者扱いですよね…すみません…!! (2018年2月24日 21時) (レス) id: a4174cb21e (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 塔間さん嫌いにはなれないです…。 (2018年2月24日 16時) (レス) id: 667d573e94 (このIDを非表示/違反報告)
星歌(プロフ) - 唄さん» 大いに同感であります唄様…!!全てにおいて美しいですもんね、めんどくせーから家デートでとか言われても全然オッケーですもんね。むしろありがたき幸せ。クロ大好きです!! (2018年2月22日 21時) (レス) id: a4174cb21e (このIDを非表示/違反報告)
唄(プロフ) - 切実にあんな彼氏が欲しくなる、と言うかクロと言う名の彼氏が欲しくなりますね。 (2018年2月21日 21時) (レス) id: 4acb668125 (このIDを非表示/違反報告)
星歌(プロフ) - お菓子の家さん» コメントありがとうございます!わあ〜!!なんとありがたきお言葉!!そう言っていただけると、もっと頑張ろうと思えます(*´∇`*) 頑張らせていただきます! (2018年2月20日 21時) (レス) id: a4174cb21e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:星歌 | 作成日時:2018年2月6日 20時